セールスパーソン

 

時代を映す保険の理想形追う

 

株式会社大藪保険コンサルタント

大藪 邦嗣 代表取締役

 

損保販売を推し進めると、やればやるほど経営を圧迫する現実を踏まえ、生保販売に軸足を移した。それは、来店型と企業財務にポイントを絞った保険提案への転換だった。「損保で得た信用を生かし、生保で儲ける時代です」。保険募集に携わり34年のキャリアの大藪邦嗣㈱大藪保険コンサルタント社長は、保険販売の現状をこう分析する。フォークソンググループ「飛行船」のマネジャーだった同氏は、小田和正やユーミンのコンサートツアーをはじめ、最近は「AKB48」のイベント保険を手掛ける。JR中央線荻窪駅前の来店型事務所を訪ね、地元杉並区中心に展開する代理店経営に迫った。

 

 

全方位の関係築き顧客に還元

 

「私たち保険代理店は、消費者にとって本当に有益な保険は何かを考え、それを保険会社に伝えることができます」

消費者に一番近い立場を生かし保険会社を動かす役割を担っていると感じる。

「保険の適切な手配や事故時の相談を含めて、ご契約者に寄り添うことが私たちの使命です」

消費者の身近なコンサルタントとして〝こうした代理店に相談したい、加入したい〟という保険募集の理想形を追求してきた。

「保険の理想形は、時代によって変化してきました。原付バイクで走り回り、事故現場に判例タイムズを携えて出掛けた時代もありました」

特級代理店認定時には、企業契約を増やすようアドバイスを受け「青年会議所」運動に時間を費やした。

「損保は、今期4000万円の増収で手数料収入は7000万円ほどです。生保の手数料収入は、今期2000万円減少し5300万円です。合計すると、手数料収入は1億2300万円ほどです」

ここ数年の手数料収入の比率は、生・損保半々あるいは若干生保が上回った。

「事務所は、内務事務を含め正社員9名体制です。当社では、米国のブローカーを基準に一人あたり1300万円の生産性を掲げます」

社員に対する充分な報酬や社会保険・退職金制度は、これをベースに組み立てる。

「保険を巡る経営環境の激変で、中小企業の損保代理店離れが目立ちます」

ある建築会社の代理店とは長い付き合いで、賠責保険だけ引き受けていた。

「突然、代理店を廃業すると打診があり、当社が全種目をお引き受けしました」

副業代理店は、保険業法問題を絡めて専業代理店以上に分岐点に立っている。

「中小企業1社でも、年間保険料は数百万円です。当社は、こういう時代の流れの中で企業分野が全体の7割以上を占めます」

 

●保険のアプローチはさまざま

経営者や従業員の福利厚生から退職金まで、生保販売は今、広がりをみせる。

「当社では、役割分担を明確にしています。私の場合、地域の役員などを担いネットワークを構築することです」

ときに飛び込み営業を行い、保険分析を申し出る。

「契約を引き受けるか否かなど契約内容の洗い出しは、チーム制を敷き全社員で受け持ちます」

担当者は、米国のブローカー研修で得たリスクマネジメント手法に基づき提案する。

「未契約の運送会社にドライブレコーダーを貸し出し『分析会』と銘打って安全講習を行います」

数年後、新規獲得につながることもある。

「保険の引受基準は、保険会社によって大きく異なります。ですから全ての保険会社と良好な関係を維持しなければ、お客さまにご迷惑をお掛けする結果を招きかねません」

とくに新種保険や傷害保険は、乖離幅が大きい。生保は返戻率などが大きく異なる。

「生保のトップセールスから入るもよし! 損保のリスクマネジメントから入るもよし! 保険のアプローチはさまざまです」

 

RMはリスクの補足・補完が基本

 

保険募集の第一歩は、人脈を生かしネットワークを構築すること。

「振り返ると、募集面だけでなく、経営面も失敗の連続でした」

しかし、失敗の数だけ会社は強くなった。

「毎年アタック企業をピックアップし、約3割を成約に結びつけます」

人口55万人の杉並区で保険代理店としての存在感を示すため、投資が必要だった。

「6年前、JR荻窪駅前の旧事務所の向かい側の青梅街道沿いのビルに家賃50万円以上の来店型事務所を開設しました」

このとき営業社員2名、事務1名を強化、人材投資と設備投資を行った。

「事故対応専任スタッフも補強しました」

タウン誌やミニコミ誌など広告宣伝媒体も活用。

「効果が現れ、収入は2倍以上に伸展しました」

とはいえ、最初の1年は悶絶・苦悶だった。

「客足は一向に伸びません。ライオンズクラブや商工会議所等の活動を通して地道に裾野を広げました」

辛抱の中で、地元企業や副業代理店から相談が持ち込まれた。

 

●抽象的な経営は多忙になるだけ

「当社の営業は、47・38・36歳と若い営業マンで回します」

コンサルティング機能を発揮する募集体制と管理体制の確立を目指す。

「中小企業をターゲットに取り組んだ果実が実り始めています」

損害保険のプロを自負する募集人の立ち位置をこう説明する。

「経営者と交流を持つことが不可欠です。総務部長や経理部長止まりの営業活動では、事業主向け保険は獲得できません」

定年間際の高齢者募集人を集めた大型代理店は経営効率が悪く、増収効果は期待できない。

「若い優秀な社員が委任型募集人の申込書作成や計上を手伝うことはナンセンスです。まるで老人介護の倶楽部のようです」

保険会社から言われたことを鵜呑みにし、増収の掛け声だけでは消化不良に陥る。

「挙績をいくら伸ばすといった抽象的なイメージの経営は、忙しさを漠然と感じるだけです」

現状から、何を捨て、何を伸ばすのかという具体的な課題が不可欠。

「百人百色の対応がありしかるべきです。自店の強みを生かした経営や市場開拓が必要です」

保険のプロとしての矜持も肝心。

「個人中心の保険募集であれば、1社専属販売のほうが有益です。でも、自動車保険中心では時代遅れです」

個人の自動車保険頼みでは先行きはない。やはりリスクマネジメント(RM)が欠かせない。

「保険料負担を緩和することがリスクマネジメントではありません。保険全般を見直す過程で、リスクの補足・補完を行うことです」

この過程で得た余剰資金は、生保に振り向けることができる。

「5年後の経営ビジョンを示せる否かが、有望なプロ代理店の道標です」

講演やセミナーでは、持論を展開する。

「どういう顧客をターゲットにするか、スタッフは何名で、どんな役割分担かなど具体的な組織や事務所の未来予想図を描くことが大切です」

保険代理店は単に儲けるツールではない。

「社会から認められる組織になることです」

社員の幸せと達成感からスタートするよう提唱。また、地域顧客の代弁者としての比較推奨代理店を目指すべきとの考え方を示す。

「特性を生かした自立と自律が必要です」

それが今回の体制整備義務など法律改正の趣旨。

「これは、保険代理店が乗り越えなければならない高いハードルです」

(小柳博之)

 

 プロフィール おおやぶ・くにつぐ 1981年5月富士火災の代理店研修生に応募、翌年7月独立。1987年4月㈱大藪保険コンサルタント開業。1999年6月やぶライフプランニング併設。日本代協や全国保険代理業協同組合活動に参画、保険代理業の底上げに尽力。現在、日本代協理事。1953年8月岩手県釜石市生まれ。61歳。獨協大学法学部卒業。損害保険トータルプランナー。

 

▶セールスパーソンのインデックスに戻る

 

 

制作 株式会社保険社 保険情報・ネットソリューション・チーム

住所 〒166-0003 東京都杉並区高円寺南4-2-8 サンユースビル2 4階

電話 03-3317-0391

 

 

○掲載内容の複写などにつきまして

 当ウェブサイトのコンテンツを無断で複写等することはできません。

○ 掲載内容につきまして

 当ウェブサイトの掲載内容は精査をしていますが、これを保証するものではありません。

 ○個人情報の取り扱いにつきまして

 当ウェブサイトを通じて取得した個人情報は厳重に管理し、当社からの連絡・通知以外の用途以外には使用しません。

 

→プライバシーポリシーについて

 Copyright 2016 Hokensha. All Rights Reserved.