セールスパーソン

 

仮説と検証で自分流のセールスを構築

 

コンサルタント 越坂 昇さん(石川県金沢市)

 

大手メーカーのエンジニアだったが、業態としての将来性に不安を感じ、独立を考えるようになった。起業すれば自らがトップセールスをしなければならないし、財務の知識も必要になる。いずれの経験も知識もない。まずはいったん転職し、これらのスキルを身に付けようと白羽の矢を立てたのが生命保険の営業だった。エンジニアとして染みついた仮説と検証を繰り返しながら「雑事でもなんでも引き受ける」越坂さん流の営業スタイルに辿り着く。

 

「語らせ上手」のセールス目指す

 

転職するまで営業の経験は一度もありませんでした。会社の研修で面談ができてからのことは教えてくれたのですが、私が困ったのは、お客さまに会って席に就くまでの状況をどう作るかでした。東京の会社に勤めた後は金沢市内のメーカーに勤めた関係で、台湾や韓国のサプライヤーとなら繋がりもあったのですが、奥能登の出身とはいえ、金沢市内には地縁も人縁もありませんでした。

 

見込客を作るのに飛び込みから始め、テレアポ、DM、紹介とあらゆるものを試してきました。飛び込みをやって、初めてお客さまができたのは、転職して3週間目のことです。自分なりに「保険の見直し」のシナリオを用意し、たまたまその通りに会話が進み契約になったのですが、ほとんどのお客さまは「保険」と聞いただけで「結構です」と返してきました。

 

最初は1日400件、団地や新興住宅地などマーケットを変えながら飛び込んでいったのですが、つまり反応がないからそれだけ回れたということです。

 

飛び込みをはじめて真っ先に気が付いたのは、日中の個人宅に行っても面談ができるのはおじいちゃんやおばあちゃんだけで、しかも昼ドラの時間帯に行くと迷惑がられることから、昼間は個人事業主に会うように切り換えていきました。時間帯によって、一部、二部、三部、そして夜間部と設定し、会う客層を変えていきました。

 

こうした状況ですから、実際に面談できたときのお客さまの反応はサンプルとしても大切なものでした。もともとマーケッティングの業務にも携わっていたので「アイドマ(AIDMA)の法則」などには馴染みがあり、それをベースに、たとえば「保険の見直しをされたことがありますか?」と問いかけたときに戻ってくる「いりません」という答えに、どう対応すべきか、いくつかのパターンを用意し検証していきました。単語帳を常に4冊ほど持ち歩き、お客さまからの反応を裏側に書き込んでいったのです。

 

そこから「今は見直しの必要がないということですか」それとも「将来に亘って見直す予定がないということですか」といった二択法より「そうですね。保険の見直しなど考えたことなどありませんよね」と、同意話法を用いたほうがお客さまの反応がいいことなどを自分の体験として体系化していきました。

営業はお客さまの話を「聴く」ことから、などと言いますが、話を聞いているだけでは埒があきませんでした。語ってもらうためにはどうすればいいのか。そこに辿り着いたのが1ヵ月目でした。そのためには的確な質問をしなければいけない、と気が付いたのが3ヵ月目ぐらいです。そして「語らせ上手になろう」というのが半年後でした。

 

この「語らせ上手」というのが今でも営業のベースコンセプトにあって、これは変わっていません。尋問にならないような尋ね方をしながら、会話量が増えてくるとお客さまの心が開いてきます。

 

大切な最初の一言

こうして、自分のセールスを検証していくなかで確信を得たものがいくつかあります。たとえば、最初の一言に「すみません」は絶対に使わないことで、これはテレアポでも同じです。「すみません、お時間よろしいでしょうか」は絶対にダメ。私は「こんにちは」と言って、返ことがあるまで待ちます。

 

また、会社名を名乗る順番も大切です。用件を先に述べてから会社名を名乗るようにします。たとえば「ねんきん定期便が届きましたか」。「何色でしたか? 青でしたか? オレンジでしたか?」「どこにチェックポイントがあるかご存じでしたか」「ご存じでない方が多いのでお知らせしています。申し遅れましたが、私、メットライフ生命の越坂と申します。年金にご関心ございますでしょうか」。

 

その時々で話題になっていることから入り、繋げていくこともポイントになります。たとえば消費税が増税になったとき。「消費税が5%から8%になりましたね。毎月平均して1万円ほど節約しなければ同じ水準の生活を維持できないのですが、どのようにされていますか。消費税増税をなかったことにする方法がありますが……」。そして社名を名乗ると、話を聞いてもらえるのですが、社名を先に告げると「保険なら間に合っています」となってしまいます。

どういった話題なら関心を持ってもらって、さらに自分が役に立つ人間だと伝わるよう、冒頭の3フレーズぐらいに心血を注いで話法を構築してきました。

 

安易な法人契約は慎んできた

 

保険のセールスというのは、お客さまを選べる数少ない仕事の一つです。「この人のためなら、頑張ろう」というお客さまをできるだけ持つことがモチベーションアップに繋がります。

 

寄り添って一緒に何かを作っていけるお客さまとの交流を大切にしています。こちらがソリューションを提案して、それでよければ採用してもらうだけではなく、悩みのプロセスを一緒にシェアしながら、問題を解決していくような関係を築くようにしてきました。

 

そうなると、お客さまと一心同体ですから、あえて紹介を依頼しなくとも紹介が生まれるようになります。取引先などへ同行すると、先方が「この人は」と尋ねてきますので、お客さまが口上とともに自分を紹介してくれます。自然な形でお客さまが広がっていきます。

 

紹介癖がある人

紹介募集について言えば「紹介癖がある人」と「紹介癖がない人」に分かれます。飲食店や個人事業主は人を紹介する癖を持っている人が多く、逆に勤め人は紹介癖を持っている人が少ない。紹介癖のある人をどうやって探し、自分自身の付加価値をどう上げていくかが課題です。

 

そうしてお客さまを選んできましたし、お客さまとの波長もあり、顧客の増え方は緩やかですが、何かあればいつでも名前を思い出してもらえるような存在にはなれていると思います。

 

お客さまには会社の経営者もいるのですが、法人契約そのものは相対的に少な目です。当初は税務のことを聞かれると分からなかったり、責任のある回答もできなかったりで、自分自身に法人契約知識の背景がないまま契約することのリスクが余りにも大きく感じられ、納得がいきませんでした。

 

逓増定期保険による退職金話法が隆盛を極めていたときもそれには乗らず、社長個人にガン保険や個人年金などからアプローチして、顧問税理士が出てこないですむ契約をいただき、持ち前のサービス精神で関係を維持してきました。

井上(得四郎)先生と出会えたお陰で、ようやく、法人契約の背景を調べられるだけの知識が身に付いてきたので、法人の提案に踏み込んでいけるようになってきたと思っています。

 

優績倶楽部との接点は偶然で、法人契約に繋がるような知識を身に付けるために、いろいろな研修会に出たり、勉強したりしてきたのですが、馴染むところがなく、井上先生の理念というか、中小企業の経営者に寄り添うフィロソフィーに引き込まれていきました。

 

悩みを一緒にシェアする活動を

 

午前中は個人事業主や小さな会社、夜は勤め先から帰ってきたサラリーマンに食事が終わったころを見計らって訪問します。これが私の言っている「夜間部」の活動です。

 

転職して14年の月日が流れ、お客さまの生活にも変化が出てきました。しかし変化をそのまま保険契約の見直しに結びつけるようなことはしません。「悩みを一緒にシェアしながら、問題を解決していくような関係」をとことん追求しています。

 

たとえば、サラリーマンだったお客さまが独立するといえば、開業準備の手伝いをします。マーケティングをしてきたので、いろいろとアドバイスもしますが、実際にチラシ作りなどの実務も引き受けます。

 

今日も、お客さまの店の前に貼るポスターを制作して、先ほどサンプルのデータを送信したところです。ここは金沢の郷土料理のお店なのですが、日曜日に料理や店内の写真も撮影し作り込んだものです。

 

これは別のお客さまですが、最近色々なメディアに出るようになったので、プロフィール用の写真が欲しいからと、昨日撮影しました。写真は趣味で昔からやっていたのですが、自分でできることは「お客さまサービス」と位置づけ、何でも惜しみなく提供していきます。

 

結果として保険契約は後から付いてきますが、タイミングを逃さないように意識はしています。ですから取っ掛かりはいつも平易なことばを使いその場で返答しやすいように語りかけます。

 

たとえば「平常時」「緊急時」という表現をよく用います。「平常時は保険を使いませんし、使わないのが正解です。あれは『予約権』で、緊急時に何かあったらお金を差し上げます。ということなのですが、それには有効期限があるものと、無期限と書いてあるものがあります。どちらにお入りですか?」。

こうした話法は転職して最初の2年間で飛び込みをしながら培ったものがベースになっていますので、状況に応じてポンと出てきます。

 

その2年間の飛び込みの後、どうやって紹介をもらうか考えたとき、前述のように自然と紹介が出てくるようにしたい、という思いはあったのですが、紹介癖のある・なしなども分からず、お客さまの友だちを助けに行くといった意味から、十字軍話法というのを作っていました。

 

「この話をしたいお友だちがいらっしゃいますか? みなさんご存じないので、いまの話をして助けてあげてください。越坂に紹介してくれではなく、お客さまが直接話をして友だちに感謝される番ですよ」。そう水を向け、そこから先は何も言いません。

 

そうするとよく電話がかかってきて、友だちに言おうと思ったが、うまく説明できない。代わりにきて説明してくれないか、となります。これが理想のパターンで、これが型にはまると、そのお客さまに話しているときに、その場で友だちに電話をしてアポまで取ってくれます。

今日でもこうした展開は日常的なものなのですが、面談の内容も、どういう考え方でライフプランニングに臨むのかであって、基本的には変わらないのですが、私自身も年齢を重ね、話に厚みが出てきました。

 

生活スタイルの改善も提案

 

巡り会うお客さまもいろいろですが「お客さまサービス」の考え方は不変です。たとえば母子家庭の方で、生活のゆとりがなければ、その枠に入った提案をしていきますし、個人で起業したての方も同じで、借入金で何とか経営しているような状況なら、それに応じた保険の提案をしていきます。

 

しかし「お客さまサービス」の視点は、繰り返しになりますが、保険の提案はプロセスの1つに過ぎません。母子家庭なら「どういう働き方をしているのか」をお尋ねし、自分の趣味などをうまく活かして副収入を得る方法など、家計の足しになるようなアドバイスもしています。

 

また、進学を控えたご家庭なら、奨学金制度が問題になっていることを引き合いに出しながら、企業がやっている奨学金の中には、もちろん諸条件はあるのですが、無返済で受験しただけでもらえる制度があることをお知らせしていきます。

 

状況的に保険の提案まで至らないこともありますが、通常はガン保険から入っていきます。保険料が安くても効果が高いからです。特に診断給付金にスポットを当てて話します。多くの場合、ガンと診断された日と次の日で生活が変わるわけではなく、仕事も休めません。そこで診断給付金が出れば安心感が違ってきます。

 

母子家庭に限らず「家計費がきつくて大変」という主婦の方には「お金の出口は消費、投資、浪費の3つしかありません」とお話します。友だちがエステを開業したからといって、付き合いで行くのはただの「浪費」です。だけれど、自分がそれで変われるもの、次に新しく何か繋げるもの、意味があるものならば「投資」になります。

 

生活スタイルを改めることも提案していきます。とにかくまるごと面倒をみる気でお客さまと接していますので、色々な相談がきます。それに可能な限り乗ります。お客さまから揉め事の相談を受け、まず弁護士を探すことから始め、3人の弁護士と面談をして選任したり、調停のときのプレゼンを一緒に練ったり、その陳述書が今日、弁護士からお墨付きが出たと連絡を受けました。

 

決して出しゃばっているわけではありません。「最大限協力します」というスタンスの中でやっています。借りは作らず、貸しは作ったとしても、私自身がやったことは直ぐに水に流して忘れるようにします。「土に還る」。何も知らなかった状態に戻して再び知識でも人間関係でも積み上げていくようにしています。

 

財務面をアドバイス

井上(得四郎)先生のおかげで、法人契約を扱う基礎ができてきたので、これを今後の活動に何とか活かしていきたいと思っています。一つは棚橋隆司先生の「棚橋財務」。これは法人への飛び込みでも使っていたのですが、経理と会計と財務は違う話だということをもっと分かりやすく、どうしたら共感を得られるようにできるのか。一度話を聞いたら詳しく続きを聞きたくなるような物語りに組み立てている最中です。

 

一つ、考えているのは「御社のいまの決算状況で、新規に何かやろうとしたとき、いくらまでなら投資できるか、ご存じですか。投資限度額を把握していますか。決算書から出てくるんですよ。たとえば、介護事業に進出したいとかいろいろな話がめじろ押しですが、自社としていくらまで、借入限度額はこのぐらいまで、と把握していますか。それに失敗したとき、リカバリーする方法とかいくつご存じですか」といったものです。

 

お客さまの中にも、北陸新幹線の開通で売り上げが上がっている企業があります。個人事業から法人成りも考え、たしかに税金は抑えられるのですが、社会保険料などの負担も大きくなります。オーナーさまと二人で考えた結論は、法人成りの見送りでした。

 

法人の契約数は少ないのですが、社長個人や個人事業主の契約はたくさんある関係から、こうした相談も増えつつあります。「お客さまサービス」の柱として、今後は財務面でのアドバイスもできるようにしていきます。

 

 プロフィール こしさか・のぼる 1964年生まれ、石川県能登町出身。富山大学工学部を卒業し東京で大手メーカに就職。ネットワークや業務システムの提案と構築に携わる。途中、父親の病気を契機に金沢に転勤し、のち、金沢市内に本社がある中堅メーカに転職、商品企画・新規事業立案などを担当しながら一般消費者向けのマーケティングを学ぶ。02年にそれまでのエンジニア畑を脱し、保険業界へと転職。これまでの業務経験と真逆の「白地開拓営業」へ活動の場を移し現在に至る。

 

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仮説と検証で自分流のセールスを構築

 

コンサルタント 越坂 昇さん(石川県金沢市)

 

大手メーカーのエンジニアだったが、業態としての将来性に不安を感じ、独立を考えるようになった。起業すれば自らがトップセールスをしなければならないし、財務の知識も必要になる。いずれの経験も知識もない。まずはいったん転職し、これらのスキルを身に付けようと白羽の矢を立てたのが生命保険の営業だった。エンジニアとして染みついた仮説と検証を繰り返しながら「雑事でもなんでも引き受ける」越坂さん流の営業スタイルに辿り着く。

 

「語らせ上手」のセールス目指す

 

転職するまで営業の経験は一度もありませんでした。会社の研修で面談ができてからのことは教えてくれたのですが、私が困ったのは、お客さまに会って席に就くまでの状況をどう作るかでした。東京の会社に勤めた後は金沢市内のメーカーに勤めた関係で、台湾や韓国のサプライヤーとなら繋がりもあったのですが、奥能登の出身とはいえ、金沢市内には地縁も人縁もありませんでした。

 

見込客を作るのに飛び込みから始め、テレアポ、DM、紹介とあらゆるものを試してきました。飛び込みをやって、初めてお客さまができたのは、転職して3週間目のことです。自分なりに「保険の見直し」のシナリオを用意し、たまたまその通りに会話が進み契約になったのですが、ほとんどのお客さまは「保険」と聞いただけで「結構です」と返してきました。

 

最初は1日400件、団地や新興住宅地などマーケットを変えながら飛び込んでいったのですが、つまり反応がないからそれだけ回れたということです。

 

飛び込みをはじめて真っ先に気が付いたのは、日中の個人宅に行っても面談ができるのはおじいちゃんやおばあちゃんだけで、しかも昼ドラの時間帯に行くと迷惑がられることから、昼間は個人事業主に会うように切り換えていきました。時間帯によって、一部、二部、三部、そして夜間部と設定し、会う客層を変えていきました。

 

こうした状況ですから、実際に面談できたときのお客さまの反応はサンプルとしても大切なものでした。もともとマーケッティングの業務にも携わっていたので「アイドマ(AIDMA)の法則」などには馴染みがあり、それをベースに、たとえば「保険の見直しをされたことがありますか?」と問いかけたときに戻ってくる「いりません」という答えに、どう対応すべきか、いくつかのパターンを用意し検証していきました。単語帳を常に4冊ほど持ち歩き、お客さまからの反応を裏側に書き込んでいったのです。

 

そこから「今は見直しの必要がないということですか」それとも「将来に亘って見直す予定がないということですか」といった二択法より「そうですね。保険の見直しなど考えたことなどありませんよね」と、同意話法を用いたほうがお客さまの反応がいいことなどを自分の体験として体系化していきました。

営業はお客さまの話を「聴く」ことから、などと言いますが、話を聞いているだけでは埒があきませんでした。語ってもらうためにはどうすればいいのか。そこに辿り着いたのが1ヵ月目でした。そのためには的確な質問をしなければいけない、と気が付いたのが3ヵ月目ぐらいです。そして「語らせ上手になろう」というのが半年後でした。

 

この「語らせ上手」というのが今でも営業のベースコンセプトにあって、これは変わっていません。尋問にならないような尋ね方をしながら、会話量が増えてくるとお客さまの心が開いてきます。

 

大切な最初の一言

こうして、自分のセールスを検証していくなかで確信を得たものがいくつかあります。たとえば、最初の一言に「すみません」は絶対に使わないことで、これはテレアポでも同じです。「すみません、お時間よろしいでしょうか」は絶対にダメ。私は「こんにちは」と言って、返ことがあるまで待ちます。

 

また、会社名を名乗る順番も大切です。用件を先に述べてから会社名を名乗るようにします。たとえば「ねんきん定期便が届きましたか」。「何色でしたか? 青でしたか? オレンジでしたか?」「どこにチェックポイントがあるかご存じでしたか」「ご存じでない方が多いのでお知らせしています。申し遅れましたが、私、メットライフ生命の越坂と申します。年金にご関心ございますでしょうか」。

 

その時々で話題になっていることから入り、繋げていくこともポイントになります。たとえば消費税が増税になったとき。「消費税が5%から8%になりましたね。毎月平均して1万円ほど節約しなければ同じ水準の生活を維持できないのですが、どのようにされていますか。消費税増税をなかったことにする方法がありますが……」。そして社名を名乗ると、話を聞いてもらえるのですが、社名を先に告げると「保険なら間に合っています」となってしまいます。

どういった話題なら関心を持ってもらって、さらに自分が役に立つ人間だと伝わるよう、冒頭の3フレーズぐらいに心血を注いで話法を構築してきました。

 

安易な法人契約は慎んできた

 

保険のセールスというのは、お客さまを選べる数少ない仕事の一つです。「この人のためなら、頑張ろう」というお客さまをできるだけ持つことがモチベーションアップに繋がります。

 

寄り添って一緒に何かを作っていけるお客さまとの交流を大切にしています。こちらがソリューションを提案して、それでよければ採用してもらうだけではなく、悩みのプロセスを一緒にシェアしながら、問題を解決していくような関係を築くようにしてきました。

 

そうなると、お客さまと一心同体ですから、あえて紹介を依頼しなくとも紹介が生まれるようになります。取引先などへ同行すると、先方が「この人は」と尋ねてきますので、お客さまが口上とともに自分を紹介してくれます。自然な形でお客さまが広がっていきます。

 

紹介癖がある人

紹介募集について言えば「紹介癖がある人」と「紹介癖がない人」に分かれます。飲食店や個人事業主は人を紹介する癖を持っている人が多く、逆に勤め人は紹介癖を持っている人が少ない。紹介癖のある人をどうやって探し、自分自身の付加価値をどう上げていくかが課題です。

 

そうしてお客さまを選んできましたし、お客さまとの波長もあり、顧客の増え方は緩やかですが、何かあればいつでも名前を思い出してもらえるような存在にはなれていると思います。

 

お客さまには会社の経営者もいるのですが、法人契約そのものは相対的に少な目です。当初は税務のことを聞かれると分からなかったり、責任のある回答もできなかったりで、自分自身に法人契約知識の背景がないまま契約することのリスクが余りにも大きく感じられ、納得がいきませんでした。

 

逓増定期保険による退職金話法が隆盛を極めていたときもそれには乗らず、社長個人にガン保険や個人年金などからアプローチして、顧問税理士が出てこないですむ契約をいただき、持ち前のサービス精神で関係を維持してきました。

井上(得四郎)先生と出会えたお陰で、ようやく、法人契約の背景を調べられるだけの知識が身に付いてきたので、法人の提案に踏み込んでいけるようになってきたと思っています。

 

優績倶楽部との接点は偶然で、法人契約に繋がるような知識を身に付けるために、いろいろな研修会に出たり、勉強したりしてきたのですが、馴染むところがなく、井上先生の理念というか、中小企業の経営者に寄り添うフィロソフィーに引き込まれていきました。

 

悩みを一緒にシェアする活動を

 

午前中は個人事業主や小さな会社、夜は勤め先から帰ってきたサラリーマンに食事が終わったころを見計らって訪問します。これが私の言っている「夜間部」の活動です。

 

転職して14年の月日が流れ、お客さまの生活にも変化が出てきました。しかし変化をそのまま保険契約の見直しに結びつけるようなことはしません。「悩みを一緒にシェアしながら、問題を解決していくような関係」をとことん追求しています。

 

たとえば、サラリーマンだったお客さまが独立するといえば、開業準備の手伝いをします。マーケティングをしてきたので、いろいろとアドバイスもしますが、実際にチラシ作りなどの実務も引き受けます。

 

今日も、お客さまの店の前に貼るポスターを制作して、先ほどサンプルのデータを送信したところです。ここは金沢の郷土料理のお店なのですが、日曜日に料理や店内の写真も撮影し作り込んだものです。

 

これは別のお客さまですが、最近色々なメディアに出るようになったので、プロフィール用の写真が欲しいからと、昨日撮影しました。写真は趣味で昔からやっていたのですが、自分でできることは「お客さまサービス」と位置づけ、何でも惜しみなく提供していきます。

 

結果として保険契約は後から付いてきますが、タイミングを逃さないように意識はしています。ですから取っ掛かりはいつも平易なことばを使いその場で返答しやすいように語りかけます。

 

たとえば「平常時」「緊急時」という表現をよく用います。「平常時は保険を使いませんし、使わないのが正解です。あれは『予約権』で、緊急時に何かあったらお金を差し上げます。ということなのですが、それには有効期限があるものと、無期限と書いてあるものがあります。どちらにお入りですか?」。

こうした話法は転職して最初の2年間で飛び込みをしながら培ったものがベースになっていますので、状況に応じてポンと出てきます。

 

その2年間の飛び込みの後、どうやって紹介をもらうか考えたとき、前述のように自然と紹介が出てくるようにしたい、という思いはあったのですが、紹介癖のある・なしなども分からず、お客さまの友だちを助けに行くといった意味から、十字軍話法というのを作っていました。

 

「この話をしたいお友だちがいらっしゃいますか? みなさんご存じないので、いまの話をして助けてあげてください。越坂に紹介してくれではなく、お客さまが直接話をして友だちに感謝される番ですよ」。そう水を向け、そこから先は何も言いません。

 

そうするとよく電話がかかってきて、友だちに言おうと思ったが、うまく説明できない。代わりにきて説明してくれないか、となります。これが理想のパターンで、これが型にはまると、そのお客さまに話しているときに、その場で友だちに電話をしてアポまで取ってくれます。

今日でもこうした展開は日常的なものなのですが、面談の内容も、どういう考え方でライフプランニングに臨むのかであって、基本的には変わらないのですが、私自身も年齢を重ね、話に厚みが出てきました。

 

生活スタイルの改善も提案

 

巡り会うお客さまもいろいろですが「お客さまサービス」の考え方は不変です。たとえば母子家庭の方で、生活のゆとりがなければ、その枠に入った提案をしていきますし、個人で起業したての方も同じで、借入金で何とか経営しているような状況なら、それに応じた保険の提案をしていきます。

 

しかし「お客さまサービス」の視点は、繰り返しになりますが、保険の提案はプロセスの1つに過ぎません。母子家庭なら「どういう働き方をしているのか」をお尋ねし、自分の趣味などをうまく活かして副収入を得る方法など、家計の足しになるようなアドバイスもしています。

 

また、進学を控えたご家庭なら、奨学金制度が問題になっていることを引き合いに出しながら、企業がやっている奨学金の中には、もちろん諸条件はあるのですが、無返済で受験しただけでもらえる制度があることをお知らせしていきます。

 

状況的に保険の提案まで至らないこともありますが、通常はガン保険から入っていきます。保険料が安くても効果が高いからです。特に診断給付金にスポットを当てて話します。多くの場合、ガンと診断された日と次の日で生活が変わるわけではなく、仕事も休めません。そこで診断給付金が出れば安心感が違ってきます。

 

母子家庭に限らず「家計費がきつくて大変」という主婦の方には「お金の出口は消費、投資、浪費の3つしかありません」とお話します。友だちがエステを開業したからといって、付き合いで行くのはただの「浪費」です。だけれど、自分がそれで変われるもの、次に新しく何か繋げるもの、意味があるものならば「投資」になります。

 

生活スタイルを改めることも提案していきます。とにかくまるごと面倒をみる気でお客さまと接していますので、色々な相談がきます。それに可能な限り乗ります。お客さまから揉め事の相談を受け、まず弁護士を探すことから始め、3人の弁護士と面談をして選任したり、調停のときのプレゼンを一緒に練ったり、その陳述書が今日、弁護士からお墨付きが出たと連絡を受けました。

 

決して出しゃばっているわけではありません。「最大限協力します」というスタンスの中でやっています。借りは作らず、貸しは作ったとしても、私自身がやったことは直ぐに水に流して忘れるようにします。「土に還る」。何も知らなかった状態に戻して再び知識でも人間関係でも積み上げていくようにしています。

 

財務面をアドバイス

井上(得四郎)先生のおかげで、法人契約を扱う基礎ができてきたので、これを今後の活動に何とか活かしていきたいと思っています。一つは棚橋隆司先生の「棚橋財務」。これは法人への飛び込みでも使っていたのですが、経理と会計と財務は違う話だということをもっと分かりやすく、どうしたら共感を得られるようにできるのか。一度話を聞いたら詳しく続きを聞きたくなるような物語りに組み立てている最中です。

 

一つ、考えているのは「御社のいまの決算状況で、新規に何かやろうとしたとき、いくらまでなら投資できるか、ご存じですか。投資限度額を把握していますか。決算書から出てくるんですよ。たとえば、介護事業に進出したいとかいろいろな話がめじろ押しですが、自社としていくらまで、借入限度額はこのぐらいまで、と把握していますか。それに失敗したとき、リカバリーする方法とかいくつご存じですか」といったものです。

 

お客さまの中にも、北陸新幹線の開通で売り上げが上がっている企業があります。個人事業から法人成りも考え、たしかに税金は抑えられるのですが、社会保険料などの負担も大きくなります。オーナーさまと二人で考えた結論は、法人成りの見送りでした。

 

法人の契約数は少ないのですが、社長個人や個人事業主の契約はたくさんある関係から、こうした相談も増えつつあります。「お客さまサービス」の柱として、今後は財務面でのアドバイスもできるようにしていきます。

 

 プロフィール こしさか・のぼる 1964年生まれ、石川県能登町出身。富山大学工学部を卒業し東京で大手メーカに就職。ネットワークや業務システムの提案と構築に携わる。途中、父親の病気を契機に金沢に転勤し、のち、金沢市内に本社がある中堅メーカに転職、商品企画・新規事業立案などを担当しながら一般消費者向けのマーケティングを学ぶ。02年にそれまでのエンジニア畑を脱し、保険業界へと転職。これまでの業務経験と真逆の「白地開拓営業」へ活動の場を移し現在に至る。

 

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