○筆者インタビュー

 

泥臭いコスト削減で保険料捻出

 

税理士 池谷 和久先生

 

正面から価格競争に挑むな

社長目線で中小企業を救う

 

本紙で『法人営業のABC』を執筆している税理士の池谷和久先生は、中小企業の経営状態が非常に悪化しており「今後、生命保険の法人契約も解約や払い済みが増えるのではないか」と警笛を鳴らしています。では、営業職員は具体的にどうすればいいのでしょうか。新春特別レクチャーをお願いしました。

 

 

 

 

一税理士の立場からすると、多少の商品の違いはあったとしても、価格も内容も大きくは変わりませんでした。ですから、乗り合っていても、個別の保険会社(またはその担当者)と馬が合えば、一緒に関与先へアプローチをしてきました。

 

しかし個人契約の保険は、ネット販売などで価格に競争力がある商品が出てきているにもかかわらず、従来の付き合いの延長線上で販売してしまうのは、どうなんでしょうか。

 

法人向けの商品も同じです。逓増定期保険などは会社によって返戻率が大きく違ったりしますので、選択の余地はあるはずなのに、結果として特定の会社に偏ってきました。

特に、保険の場合はコミッション率が高いので、建前ではプランニングの結果だと言いつつも、そうした部分を意識してきたのも事実でしょう。

 

ただ、ここ数年、そうした売り手のエゴのようなものが許されなくなってきているように感じます。一つには、来店型の保険ショップの隆盛です。お客さまが自ら出向き、複数の会社から商品を選ぶことが当たり前のようになってきています。

 

この流れは抗えない、というか他業界ではすでに当たり前のものになっています。家電商品は、もう随分前から街の電気屋さんで購入すると10万円したものが、量販店に行くと7万円で販売しています。これが普通なのですが、保険業界は護送船団方式で長いこと10万円のものしか売れませんでした。

 

もちろん、今日でも10万円の商品があってもいいわけですが、7万円の商品と比較する機会や場がありませんでした。そして10万円のプライスにはそれなりの理由があるはずなのに、それを7万円と比較されたとき、優位性を答えられない人が多いのではないでしょうか。

 

選択肢のある乗合代理店ならともかく、専業でやっている場合、この価格差は個人の力ではどうにもなりません。勝手に値引くこともできないわけですから。それならどうするのか。専業職員として価格に見合う付加価値を身につけなければなりません。

 

例えば、同じ車を買うにしても、ディーラーから安く買おうとする人がいる一方で、街の個人商店のようなお店から購入する人もいるわけです。

 

値引率もたいしてよくなければ、単なる義理や人情かというとそうでもありません。マニア垂涎のチューンパーツがそろっていたり、メンテの相談にじっくり乗ったりしているわけです。

 

保険の本体価格がいじれないのであれば、社長のパートナー、経営企画部長ぐらいのつもりで接しなければならないでしょう。

 

では、いま何が求められているのでしょうか。本紙の私の連載に登場する「秋葉さん」にも言っているように、単純に保険の知識だけでなく、会社の存続がもっとも大切なことで、それに役立てるような形で商品や情報を提供していくべきです。

 

ちょうど連載の78回(11月25日号)、79回(12月9日号)で「中小企業倒産防止共済(倒産防)」と「小規模企業共済」に触れていますが、この時代に中小企業の社長は連鎖倒産を非常に気にしています。

 

ですから、それを防止する制度のお知らせは、とても価値があります。ただでさえ、資金繰りが苦しい中小企業に、倒産防の制度をご紹介したら、掛け金捻出のために既契約の生命保険を解約されてしまうかもしれません。しかし、その社長の会社が潰れてしまったら何も残らないわけです。

 

実際、中小企業の現状は悲惨です。直前の80回(12月16日号)では「金融円滑化法」をテーマに取り上げています。同法のおかげでことなきを得ていますが、全国の金融機関の1割が、44兆円の不良債権予備軍を抱えていると言われています。

 

実は何も起こっていないようですが、全国ベースでは10%、地銀で14%、第2地銀で18%の不良債権の予備軍になっています。

 

これだけあると「倒産防」も含めて、お客さまの会社が存続してあげることをしてあげないと、どんなに仲良くしていても、会社がなくなってしまえば元も子もありません。

ですから、優良企業は別として、多くの中小企業に情報提供と既契約のメンテナンスを確実にやっていくことです。

 

「困ったときにこうしたらどうですか?」という情報はとても価値があります。そしてまさに現状は、多くの企業でそうした情報を欲していまです。

 

法人営業の好きな方は、いまが実力の発揮どきです。保険営業を職業として生きるためにはどうしたらいいのか。まず、長いお付き合いをしていただけるような知識や信用が必要なのではないでしょうか。

 

形だけの「御社のために」ではなく、本当に御社のためにならないとダメです。

 

大上段に構えないIT化

 

少し具体的な例を挙げて「資金繰りが悪いから、保険を解約したい」という中小企業のオーナーへの情報提供をご紹介していきましょう。

 

中小企業は思ったほどIT化が進んでいません。進めようにも推進するような人材がいなかったり、コンサルタントを頼むほどではないと思っていたりします。

 

たしかにホームページの作り方やネット販売、クラウドの活用など、手をつける課題はたくさんありそうですが、どこの企業もハイレベルなものを必要としているわけではありません。もう少し泥臭く、すぐに経営に跳ね返るようなご提案をしてみませんか。

余りハイレベルになってしまうと、保険営業への効果が見えなくなってしまいますし、お客さまも関心を示さないかもしれません。

 

たとえば、プリンターの維持管理費の軽減とその効果をお知らせします。ポスティング用のチラシを営業ツールにしている会社は少なくありません。ところがみなさん、印刷を外注しています。

 

プリンターがあるのですから「自分で印刷してみませんか」と問いかけてみてください。内製化するメリットは価格だけではありません。外注するとロットが大きい方が単価が安くなるので大量に作りがちですが、1度作ってしまうと、次回まで変更がききません。つまり大事な営業ツールなのに、タイムリーなものが使えないわけです。

 

自前なら臨機応変に内容も変更できます。外注だと1000部とか2000部のロットで1種類しか作れなかったものを、配布先に応じてタイトルや内容を何種類も作れます。

こうしたものこそIT化なわけです。気になるのは内製化した場合のコストですが、これはコピー機のリース代も引き合いに出し、互換インクを使ったインクジェットプリンターへの利用方法と併せて話していくと効果的です。

 

こうして保険料の原資をオフィスの中から金鉱のように見つけてあげると、もともと保険は不要なものではないのですから、解約も思いとどまってもらえます。

 

いままでも保険営業の中で、事業承継や相続・争族のリスクヘッジの説明はしてきたわけですが、その費用(保険料)をどう工面するかのという話はあまりしてきませんでした。

 

現状では、節税の話は極々限られたものでしかありません。私たち税理士ですら、どんなに高度なテクニックを勉強しても、節税のスキームを生かせる場面というのはほとんどありません。それよりどうやってお客さまを守っていくのか、との観点でともに汗をかくことが求められています。

 

それはみなさんも同じではないでしょうか。そこまで泥臭いことをしないと「単にお金がないよ」といった反応になってしまいます。

 

活動エリアを集約

 

私は以前、東京にも何社か顧問先があったのですが、譲ってしまいました。基本的には自転車やバイクで回れる範囲に限定したいと思ったからです。これは保険の営業とも絡んでくると思うのですが「すぐに行ける」範囲で仕事をするということです。

 

片道1時間も掛かるようなところだと用がないと行かなくなってしまいます。ふらっ、と寄るようなことがなくなります。つまり前述のような雑談の中から始めるコンサルティングができません。ですからエリアを限定して情報提供に重きがおけるような活動が望ましいですね。

 

たとえば、遠距離だとわりとかかったコストをコミッションで回収しようと思うので、ややもすれば無理な提案を通すことになりかねません。

 

コンサル営業するためにはエリアは非常に大切な要素だと思います。ベストは24時間対応できる定価販売のコンビニ型の赤ひげ先生です。タイミングよく付加価値をつけた営業をしていってもらいたいと思います。

 

制作 株式会社保険社 保険情報・ネットソリューション・チーム

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