2023年5月19日 3104号

 

 

日本生命

 

2023年度一般勘定資産運用説明会

負債特性に留意し機動的配分調整実施

 

日本生命は4月24日、東京都千代田区丸の内の本社において2023年度の一般勘定資産運用計画についての説明会を開催した。

長期化するウクライナ情勢や、その影響を受けてのエネルギーや穀物を始めとする資源・原材料価格の上昇、さらに度重なる米国の金利引き上げを主な要因とする円安の進展による消費者物価の上昇など、国際・国内諸環境の文字通りの激変は、生命保険会社の資産運用にも大きな影響を与えている。

こうした状況下での日本生命の2023年度の資産運用計画と2022年度の資産運用の振り返りについて、当日の説明会の内容に沿って、その概要についてとりまとめた。

なお、説明には同社の都築執行役員財務企画部長があたった。

 

22年度末総資産  72兆3400億円

 

2022年度の振り返り

⑴インフレ

2022年度のメインテーマはインフレ率に上昇とその高止まり、そしてこの状況を受けた各国の中央銀行による急速かつ大幅な利上げだ。各国の消費者物価指数はコロナ禍の影響による供給面での制約や資源価格の高騰、そして巨額の財政出動を背景に大きく上昇している。

 

米国では、顕著な雇用環境の改善を背景とした賃金上昇等を受け、サービス価格は高止まりしていることから、インフレ低下に向けては一進一退の状況となっている。

 

国内物価については足元41年ぶり、1980年以来の水準にまで上昇しているが、今後についてはエネルギー価格や円安の一服感、輸入物価の落ち着きから、物価の上昇率は鈍化する見通しと推定している。

 

⑵金利動向

米国・欧州では、インフレの亢進を受けた各国中央銀行によるかつ急速な金融の引き締めが実施され、インフレの高止まりもあり、長期金利についても高い水準で推移している。一方で、日本ではマイナス金利政策は廃止されてはいるものの、2022年末に実施された「イールド・カーブコントロール」の一部見直しによって、長期金利は一時、上限である0.5%程度」まで上昇した。

 

⑶対応

以上のような運用環境を踏まえた日本生命の資産運用取り組みの振り返り(世界的な金融正常化局面での運用取り組み)当社の中長期的な運用方針である①円金利リスクの圧縮、②クレジット資産の積み増し、③国際分散投資の推進に沿って、リスク・リターン効率の向上を図りつつ、急激な資産運用環境の変化に対応するため、資金配分計画の機動的な見直しを実施した。

 

具体的な見直しの内容は、ヘッジコストの上昇への対応として、過去に投資した低い利回りの外国国債を売却し、金利の上昇を捉えて外国社債や日本の超長期国債への入れ替えを実施した。加えてドル/円の上昇局面を捉え、オープン外債の売却を行い、前述の外国国債売却に伴う「売却損」に対応する「キャピタル益」を確保することができた。この一連の投資行動は、低利回り債の売却により、一時的に「売却損」を計上する一方で、中長期にわたる運用利回りの向上を企図したものである。

 

なお、2022年度一般勘定の増加資金は9800億円程度になる見込みである。

 

⑷各資産の状況について

①円金利資産

一般貸付については企業の資金需要に応じつつ、金利水準等の条件面を精査して貸し出しを行った結果、3000億円の増加となった。

②国内債券等

金利の上昇局面を捉え「ヘッジ外債」の売却資金を原資としつつ、超長期国債や「通貨スワップ」を利用することで、円金利化した外国社債への投資を行った結果、3兆900億円の増加となった。

③ヘッジ外債

ヘッジ外債は金利上昇、ヘッジコスト上昇を踏まえ、社債を選考しながら債券ポートフォリオの入れ替えを進めた結果、2兆4000億円の減少となった。

④円金利以外の運用資産

 

・国内株式等

国内株式等は、子会社等の投資に加え、個別企業ごとにその成長性や株主還元の状況等を精査して、ポートフォリオの組み換えを実施した結果、600億円の増加となった。

・オープン外債

オープン外債は、ヘッジ外債と同様にポートフォリオの入れ替えに加えて、円安局面を捉えた利益確定等を行った結果、1兆600億円の現象となった。なお、ここには「外貨建保険」見合いで投資している「為替オープン」の外債投資も含まれている。

・外国株式等

外国株式等については、プライベートエクイティファンド、不動産、インフラファンド等の「オルタナティブ資産」に投資することで3700億円の増加となった。

・国内不動産

物件のリニューアルや物流施設への投資を実施したことにより、600億円の増加となった。

 

以上の結果、2022年度末のポートフォリオは、円金利資産が約71%、円金利以外の資産が約27%となった。

 

なお、有価証券の含み損益の状況については、内外金利の上昇を主な要因として、前年度末から2兆6200億円減少し、8兆500億円となっている。

 

2023年度以降の経済環境見通し

・日本経済

日本経済は欧米経済の減速に下押しはされるものの、高い水準の家計貯蓄や賃上げの伸展を背景として、民間消費や設備投資が成長を下支えする見通しだ。なお、2023年度の成長率は1.0%となる見通し。

 

・米国経済

金融の引き締めが長期化する中、利上げの影響により個人消費や設備投資が減速することにより、%となる見通しだ。

 

・ユーロ圏経済

ユーロ圏経済は、インフレやECBによる金融引き締めが景気の下押しとなり、成長は鈍化するという想定だが、深刻なエネルギー不足に対する懸念の後退や、堅調な雇用、そして高い水準の家計貯蓄が成長を下支えすることにより、2023年の成長率は0.4%となる見通しだ。

 

・中国経済

中国経済については、欧米経済の減速による外需の低迷は下押し要因とはなるものの「ゼロコロナ政策」の撤廃を受けて、人流や経済活動が回復に向かっていることから、2023年は「ゼロコロナ政策」の反動により、高めの成長率を想定している。なお、2023年の成長率は5.3%となる見通しだ。

 

2023年度マーケット環境見通し

⑴国内金利

イールド・カーブコントロール政策の再修正を見込み、概ね0.8%程度と見込んでいる。

⑵米国金利

インフレ率の高止まりを背景に、年前半は利上げの継続を想定しているが、その後はインフレが徐々に落ち着きを見せることで利上げは停止されると想定しており、年度末は現在から概ね横ばいの水準になるであろうと見込んでいる。

⑶国内株価・米国株価

欧米の金融引き締めによる企業業績の下押しから、株価については軟調な展開になると想定しているが、深刻な景気の減速は見込めないことから、年度末は概ね横ばいから、やや低下すると見込んでいる。

⑷為替

為替についてはドル/円、ユーロ/円ともに欧米での利上げ停止と、国内における金融政策の修正を背景に、年度末は円高方向での着地を見込んでいる。

 

2023年度運用方針

以上、経済・マーケット環境を踏まえ、2023年度の運用方針は、現時点(4月24日時点)で以下のように考えている。

⑴一般貸付

引き続き、スプレッド水準等に留意して実行していく。取り組みを強化している「プロジェクトファイナンス」の増額や円債等をあわせて横ばいの計画である。

⑵国内債券等

全体では増加の計画。通貨スワップを利用して、円金利化した外国社債や超長期債への投資を計画している。

⑶ヘッジ外債

全体では横ばいの計画。ヘッジコストの高止まりを見込む中、ヘッジ後の利回りで投資妙味のある外国社債等に厳選して投資を行っていく。

⑷オープン外債

“やや円高方向”への見通しを踏まえ、横ばいから減少の計画としている。なお、ヘッジ外債とオープン外債の配分については引き続き、為替や金利の水準に応じて機動的に調整していく。

⑸内外株式

外国株式は、利回り向上と分散投資の観点から、引き続きオルタナティブ資産への投資を実施し、増加の計画。

⑹国内株式

横ばいを計画。内外あわせて増加となる。

⑺国内不動産

物件のリニューアル投資のほか、新規優良物件の取得等についても柔軟に対応していく。

 

ESG投融資 目標を1年前倒しで達成

 

中期経営計画における資産運用戦略

2021年度からスタートしたう(「Going Beyond─超えて、その先へ─」における資産運用戦略は、これまでも説明してきたように、外部環境としては世界的なインフレの亢進、金利上昇や地政学的なリスクの顕在化など、不透明な運用環境が継続する中で、収益性と持続可能な社会双方の実現に向けて、ポートフォリオの変革とESG投融資の2点に注力している。

 

なお、ポートフォリオの変革については、円金利資産の長期化やクレジット資産の積み増し、オルタナティブ資産を中心とした国際分散投資の推進等に取り組んでいく。

 

ESG投融資1.9兆円まで積上げ

ESG投融資テーマの投融資については、2017年度から2023年度までの累計で1.7兆円の目標を掲げてきたが、2023年3月末時点で1.9兆円まで積み上げることができた。1年前倒しで目標を達成することができた。

1年前倒しで当初の目標を達成できたことを受けて、新たに2017年度~2030年度までの目標として、ESGテーマ投融資を5兆円、そのうち「脱炭素枠ファイナンス」枠について3兆円の目標を掲げている。

 

今後新たに設定した目標に向けて、ESGテーマ投融資を推進することで、企業のESG取り組みを後押しするとともに“アウトカム”の計測や管理、その開示も強化していく。

 

なお、日本を含む世界のESG投融資に貢献すべく、当社は2023年10月に開催されるPRI(2006年に発足した、世界最大の機関投資家による国際イニシアティブ)年次カンファレスのリードスポンサーに就任した。PRI年次カンファレスは、気候変動や人権などのESGを巡る様々な課題について議論する最大級の国際イベントだが「アセットオーナー」である保険会社がこのリードスポンサーに就任するのは世界で初めてとなる。当社は当イベントのリードスポンサーを務めることで「インベストメントチェーン」にかかわる様々なステークホルダーをこのイベントに巻き込み、グローバルな資産運用業界における責任投資の高度化と進展に貢献していく。

 

3〜4面 コロナ

 

ニッセイ基礎研究所

新型コロナによる暮らしの変化

 

ようやく落ち着いてきたコロナ禍。5月にはインフルエンザと同じ感染症分類(5類)に変更されるなど「コロナ禍明け」も見えてきた。こうした状況下で消費者の行動はどのように変化したのか。同研究所が3月末に行ったアンケート調査から紹介する。

 

6面 法人開拓

 

法人営業のABC

不動産相続関連ルールが大幅転換③

税理士 池谷和久

 

令和6年4月1日から「相続登記申請」の義務化が始まる。これは所有者不明の土地があまりにも多いことを受けて、相続事由が発生してから3年以内に土地の登記を義務化することにより「所有者不明土地」が新たに生じないようにするものだが、一般にはあまり知られていない。

 

7面 社会保障

 

社会保障なんでも相談センター

特定社会保険労務士 園部 喜美春

 

今回は公的年金制度のうち、障害年金を受給するにあたっての、様々な条件について解説する。具体的には初診時にどのような制度に加入しているか、保険料の納付要件を満たしているか、障害認定日に定められた障害状態に該当しているかが受給できるポイントになる。

 

8〜9面 販売支援

 

コミュニケーション・ツール

担当地域の健康増進事業をチェックする

 

今回は「健康増進」について取り上げる。ここで紹介するのは「老人保健法」の改正により、市区町村で担ってきた事業のうち、医療保険者に義務付けられていない事業を、市区町村が「健康増進法」に基づいて行っているような「健康増進」事業等について紹介する。

 

10面 商品

 

太陽生命

「告知緩和型がん診断保険」 他

 

太陽生命は、選択緩和型商品として「告知緩和型がん診断保険」「告知緩和型がん治療保険」、標準体向け商品として「ガン保険料払込免除特約」の3商品を発売した。同社はこれまでも健康に不安がある人でも簡単な告知で申し込みができる商品を数多く発売している。

 

11面 商品

 

三井住友海上

「海外旅行キャンセルサポート」

 

コロナ禍の沈静化により、海外旅行の需要がさらに回復することが見込まれる。このような中で、より安心な海外旅行を後押しする目的で、三井住友海上とHISが協働で開発したのがこの商品。キャンセル原因を限定せず、かつ幅広いリスクに対応することができる。

 

12面 育成

 

育成トークセッション

成績は数の中にある

 

優績者や組織長などが生保販売の現場で悩んでいる新人にその解決策を伝授するシリーズ。今回は新人から寄せられた、成績不振、断りへの対応、上司からのプレッシャー、さらに見込客との「会話」についての相談に対し、それぞれ具体的な対応方法を紹介する。

 

14面 優績への道

 

優績へのナビゲーション

職域の人すべてを友人に

 

入社当初「私にこの仕事ができるのだろうか」と悩んでいた土田さん。そんな土田さんへの上司のアドバイスは「職域の人をすべて友だちにしなさい」というものだった。このアドバイスを素直に実践したことにより、担当職域の3分の1から挙績することができたのだという。

 

 

 

 

 

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