2023年5月12日 3103号

 

 

生命保険協会

 

会長定例記者会見

コロナ禍3年間の生保業界対応を総括

 

一般社団法人 生命保険協会の稲垣精二会長(=写真)は4月21日、生命保険協会で定例の記者会見を行った。新型コロナウイルス感染症にかかわる給付金の特別取り扱い、デジタル社会への対応、資産運用を通じた「株式市場の活性化」「持続可能な社会の実現」に向けた取り組みについて報告があった。また、新型コロナによる入院給付金の支払いが、2023年2月時点で1090万件、1兆2000億円を超える規模となったことを明らかにした。

 

 

見なし入院見直し 適切・丁寧に対応

 

記者会見では、稲垣会長より次の3点について報告があった。

 

1.新型コロナウイルス感染症における給付金の特別取扱の対象について

政府において来月5月8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「5類感染症」に変更され、この位置づけの変更により、感染症法上の「入院措置・勧告」が適用されなくなる予定となっている。

 

これまで会員各社においては、感染症法上の「入院措置・勧告」が適用される「高齢者等の重症化リスクの高い方々」を対象として「みなし入院」の特別取扱いが行われてきたが、今般の政府方針を踏まえ、各社において特別取扱いの見直しの検討が必要となっている。

 

このため、会員各社において「みなし入院」による入院給付金等の取扱いの見直しに向けた検討や、見直しを行う場合のお客さま宛ての丁寧なご案内が適切に行われるよう、先般4月10日に、生命保険協会として会員各社への周知を実施している。

これを受けて、会員各社にて検討が進められ、医療保険など入院給付金等を有する保険商品を販売している保険会社39社全社が、ホームページ等にて「みなし入院」に係る給付金等の取扱いの方針等を掲載しているものと承知している。

 

各社リリース等にて公表のとおり「高齢者等の重症化リスクの高い方々」を対象としている現状の「みなし入院」の特別取扱いについては、5月7日までに新型コロナウイルス感染症と診断された方がお支払いの対象となり、5月8日以降もご請求いただけるものと承知している。

 

また、新型コロナウイルス感染症と診断され、医療機関に入院された場合には、各社の「約款」に応じて、5月8日以降も入院給付金等のお支払いの対象となるものと承知している。

 

詳細については、各社のホームページ等にてご確認いただきたい。

なお「マイハーシスの療養証明書」機能については、9月末まで同機能の利用が可能であることが厚生労働省より公表されている。

生命保険に加入している皆さまにおかれてはご請求の手続きに際しては、医療機関や保健所の負担軽減のために、可能な限り「マイハーシスの療養証明」をご利用いただきますよう、ご理解とご協力をお願いしたい。

 

未来のウェルビーイングに貢献

 

2.「デジタル社会における生命保険業界の将来 報告書・提言書」について

本事務年度の重要テーマとして位置づけている「持続可能な社会の実現に向けた生命保険業界としての役割発揮」に向けた取り組みとして「デジタル社会における生命保険業界の将来 報告書・提言書」を取りまとめ、本日公表した。コロナ禍を経て社会全体のデジタル化が加速し、生命保険業界においてもデジタル技術を活用した非接触でのサービスや、手続きの効率化などが伸展してきた。足元では政府において、マイナンバーカードやマイナポータルの活用による各種サービスの拡充・環境整備に向けた施策が展開されており、今後ますますマイナンバーカードの普及率や国民生活における利用機会は増加していくことが見込まれる。マイナンバーカードが新しい社会基盤となるこれからのデジタル社会においては、マイナンバー制度の利活用により、行政機関等が保有するデータの連携が可能となることで、民間においても一層の「お客さま」の利便の向上や新たなサービス創出の可能性が広がっていくものと期待している。

 

こうした状況を踏まえ、今般、生命保険協会として、諸外国におけるデジタル活用の事例も参考としつつ、マイナンバー制度を通じたデータ利活用による効率的・効果的な新たな生命保険関連サービス提供の可能性を検討し、民間の視点から生命保険に留まらず、国民生活を豊かにする新たなサービスの創出に必要な環境整備を促す観点から、本報告書・提言書を取りまとめた。

 

なお、本報告書・提言書は2部構成としている。

第1部は「社会保障制度におけるデジタル対応と諸外国の取組事例」の調査報告書となっている。

 

ここでは特に諸外国で普及している日本のマイナンバーと類似の仕組みである「個人識別番号の仕組み」や「官民での利活用の状況」等についての調査結果をまとめている。

 

たとえば、諸外国においては行政分野に限らず、生命保険などの民間分野においても様々な場面で個人識別番号の仕組みが活用されており、こうした事例は、日本におけるデータ利活用の検討にあたっても参考になり得るものと認識している。

 

第2部は「マイナンバー制度を通じたデータ利活用による生命保険の利便性向上」に向けた提言書となっている。

 

第1部の報告書も踏まえ、生命保険分野における具体的なユースケースを検討し、保険金支払いの効率化・自動化など「お客さま利便」に資する対応の実現に向け、制度面等の課題について提言事項をまとめている。

 

将来的に、生命保険会社が「お客さま」本人の同意のもとで健康・医療分野を含む幅広いデータを利活用できるようになれば、手続きの効率化に留まらず「お客さま」の健康寿命の延伸や、QOL向上に資する新たなサービスの実現につながりうるものと考えている。

 

本提言書に掲載したユースケースは「実現のめどがたっているもの」や「今後の検討に期待するもの」など状況はさまざまであるが、生命保険業界としても、新しい社会を見据え「お客さま」一人ひとりのニーズに合った最適なサービスを提供し続けることで「お客さま」の未来のウェルビーイングに貢献していきたいと考えている。

 

対話を通じ投資家の期待値伝える

 

3.生命保険会社の資産運用を通じた「株式市場の活性化」と「持続可能な社会の実現」に向けた取り組み。

生命保険協会では、毎年、企業価値向上に向けた取り組みに関して幅広い視点から企業・投資家の皆さまへのアンケートを実施している。その分析結果をもとに、企業や投資家等に対する提言を取りまとめた報告書を本日公表した。

 

先月、東京証券取引所よりプライム市場およびスタンダード市場に上場する企業に向けて、いわゆる「PBR1倍割れ」企業に対するスタンスが示されているが、生命保険協会としても「企業の持続的な価値向上」というのは非常に重要なテーマであると考えている。

今回のアンケート結果について簡単にコメントさせていただきたいと思う。冊子4ページをご覧ください。下段に、今回の提言項目をまとめている。また、5ページ以降に、それぞれの提言内容を示している。アンケート結果によれば「株主還元拡大」については76%の投資家が現状の株主還元・配当水準に充分満足しているとは言えないという結果だった。

 

「株主還元」の考え方については、各企業の成長ステージ等に応じて柔軟に設定されるべきものと思うが、対話を通じて投資家の期待値をしっかり把握し、中長期的な還元拡大に向けた取り組みを行っていくことが重要と考えている。

 

また、冊子6ページにある「資本コストを踏まえたROE目標の設定」については87%の投資家が8%以上のROE水準を期待している一方、上場企業の45%がROE8%未満に留まっていることが分かる。

 

ここから、株主還元や資本効率について、投資家の期待値と実態との間に依然として大きなギャップが存在しているということが言えるかと思う。

 

このように、本報告書では、それぞれの項目について継続的なアンケート調査に基づき企業と投資家それぞれの視点を示し、双方のギャップに着目することで「企業の持続的な価値向上」、ひいては株式市場全体の活性化に資するための提言を取りまとめている。

 

なお、本日、この会見の後に「本報告書に関する説明会」を行うので、そちらもぜひお聴きいただければと思う。

 

●質疑応答

 

各社とも社会的責任を果たす

Q:みなし入院について、5月8日から新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置付けが5類感染症に変更になることで、生保業界としてみなし入院の特別取扱いを終了するが、一連のみなし入院対応について総括をお願いしたい。

 

稲垣協会長 現時点では、総括とまではいかないが、みなし入院の特別取扱いについては、病床の逼迫(ひっぱく)などの事情で、本来、入院が必要な方が入院できないという課題に直面する中、協会会員各社が特例措置として、保険約款を柔軟に解釈したことに加え、支払い体制の増強やお客さま対応などの面でも創意工夫して、この3年間対応してきたものとなる。

 

新型コロナによる入院給付金のお支払いは、2023年2月時点において業界全体で1090万件、1兆2000億円を超える規模となった。

 

これは「お客さまに安心をお届けする」という生命保険会社の社会的使命を果たすべく、各社が努力を重ねた一つの結果ではないかというふうに私は考えている。

 

先ほどご説明させていただいた通り、足元では、政府における新型コロナの感染法上の位置付けの変更に伴い、会員各社より、みなし入院に係る給付金のお支払いの方針等が公表されているものと承知している。当然のことではあるが、給付金の支払い範囲の変更に際しては、各社において引き続き丁寧なお客さま向けのご説明が行われるよう努めていくことが非常に重要であるというふうに認識している。

 

マイナス面もプラス面もあった

Q:コロナが今年3年目で収束しつつあるが、生保業界全体でこのコロナ対応の総括というのをいただきたいと思う。もちろん給付金がメインとなるが、それ以外も、コロナで職域移動がほとんどできなくなったりとか、あとはデジタル化が進んで職員などもテレワークなどで対応したりとか、あと保険金の請求もデジタル化が非常に進んだというところで、給付金の請求以外のところについても3年間の総括をいただければ幸いです。

 

稲垣 大変重要な視点だと思う。おっしゃる通り、このコロナを契機としたこの3年間でデジタル接点が増えたと認識をしている。

 

また「お客さま」との接点も、特に第一生命は、かなり「フェース・トゥ・フェース」のコンタクトだったものがリモートでの面談や、メールでのやりとりなど、そういったものが増えてきているということで、我々が想像していた未来がかなり近くなったという認識をしている。

 

それがみなし入院や給付金、保険金のお支払いとは別に、コロナの3年間で私ども業界が体験したことだと思う。

 

おっしゃる通り、コロナがお客さまとの接点を遠ざけるものが3年間あったので、マイナスはあったとは思うが、逆にデジタルやリモートでつながるというような、新しいイノベーションも起きているということで、この3年間はマイナスもあったがプラスもあるという、そんな受け止めだ。これは不可逆的なものが起きたと感じている。

 

市場と丁寧なコミュニケーションを

Q:4月に日銀の新しい体制が発足して、来週には初回の決定会合があると思う。生命保険業界は巨額の資金を有する重要な金融・保険団体で、日銀の金融政策の動向というのはかなり気になるところかとは思うが、協会長はこの新しい日銀の体制に対しての期待を。

 

稲垣 日銀の新体制、来週、決定会合があるので、これは生命保険協会長というよりは、私の個人的な見解という形になるかと思う。

 

前回の会見のとき、新体制に向けて非常にバランスの取れた総裁、副総裁体制だということをお話し申し上げたと思う。現時点、インフレもあるし、ただ、物価の上昇の中でも輸入インフレが起因とされているというふうな日銀の見解について、我々も全く同じ意見だ。非常に金融政策は難しい局面にあると理解している。

 

そこを日本銀行には、経済、物価、あと金融情勢などの外部環境、さまざまなものが今、低下しているので、我々の要望としては、引き続き市場との丁寧なコミュニケーションをお願いしたいと思っている。

 

金融政策は日銀の専管事項なので、現時点で何か具体的なコメントというものは差し控えさせていただくが、ぜひ市場との丁寧なコミュニケーションというところをお願いしたいと思っている。

 

課題、残課題を着実に進めていく

Q:2月に営業職員の着眼点が公表され、引き続きフォローアップされると思うが、次どういった重点課題に取り組みたいか。

 

稲垣 着眼点を2月に公表して、会員各社においてはこの着眼点を踏まえた各種体制のチェックが現在行われていると思います。

 

個社として、第一生命は先週提出させていただいたが「経営品質刷新プロジェクト」の中で、この着眼点のフレームワークと重ね合わせる形で、我々の点検を行うという、これが会員各社で現在行われていると思っている。

 

その中で見えてくる課題、残課題というのは、それなりに出てくる可能性はあると思っていて、それを着実に進めていただくということが協会長としての期待だ。

 

3面 動機付け

 

今日から使えるセルフモチベーション術

「負の感情」とどう付き合っていくか

メンタルトレーナー 原 小百合

 

上司と部下間のコミュニケーションや顧客対応の場面で、自分では当然・当たり前と思っていたことが通用せず、ストレスを感じることがある。こうした「負の感情」をどうコントロールし、モチベーションを維持・向上させていくか。その対処法を紹介する。

 

【今回のセルフモチベーション術】

負の感情と上手く付き合うための3STEP

  1. 自分がついとってしまう対応パターンを自覚する。
  2. 「こうであってほしい」という期待感や「〜であるべき」という価値観を探る
  3. 今後に向けて建設的な対応方法を検討する

 

4〜5面 コンプライアンス・リスク

 

第一生命

「着眼点」への取組み状況(後編)

 

生保協会がこの2月17日に公表した営業職員チャネルのコンプラ・リスク管理態勢の更なる高度化に向けた6つの「着眼点」について、いち早く「着眼点」への対応状況について公表した第一生命の取組みの具体的な内容について紹介する。

 

6面 法人開拓

 

法人営業のABC

不動産相続関連ルールが大転換②

税理士 池谷和久

 

わが国における所有者不明の土地の総面積は、九州本島のそれに匹敵するという由々しき事態になっている。こうした現状を改善するために、政府は不動産関連ルールの大転換を行った。今回はこのうち「相続登記申請の義務化」について、その内容を解説する。

 

7面 家計

 

明治安田生命

「家計に関するアンケート調査」

 

同社が実施し、この4月24日に公表した「家計に関するアンケート調査」によれば、昨年比で収入は増えたものの、支出についても物価高の影響で増えているこが分かった。また、約6割の人が働きたくても「年収の壁」により働けないと回答している。

 

8〜9面 FP販売

 

まるっとわかるFP販売

遺言の種類と特徴について

CFP・宅建取引士 丸山 浩

 

遺産を相続するにあたっての、いわゆる「争族」の発生を回避するための有効な手段の一つに「遺言」がある。この遺言には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があるが、今回はそれぞれのメリットとデメリットについて解説する。

 

10面 商品

 

第一生命

「企業年金商品」

 

この企業年金は、第一生命がこれまで高度化してきた「ALM」のノウハウを企業年金に活用した、顧客のニーズに応じて運用をカスタマイズして提供する「特別勘定第2特約」に新たに「サープラスヘッジ型」と「収益追求型」の2つの運用戦略を追加したもの。

 

11面 商品

 

アフラック・日本郵政グループ

「重大疾病一時金特約」

 

この「重大疾病一時金特約」は、心疾患、脳血管疾患の治療を目的とする手術、入院に対して最大100万円を支払うというもの。この「特約」をがん保険に付加することで、がんとあわせて心疾患、脳血管疾患の治療に備えることができる。

 

14面 採用・育成

 

実践!営業所経営

うまくいった組織長の意識改革

 

法人を中心とした基盤開拓に力を入れ、そこに新人を投入することで育成とあわせて陣容の拡大にも成功することができた滝林所長。元々法人開拓に弱かった営業所の方針を転換し、実行・成功することができた背景には、組織長の意識改革があった。

 

 

 

 

 

 

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