2023年1月27日 3089号

 

 

SBI損保

 

トップラインからボトムラインの強化が奏功

 

SBI損害保険(五十嵐正明代表取締役社長=写真)は昨年12月9日、東京都港区六本木の泉ガーデンタワーにおいて、恒例となっている「近況報告会」を開催した。同社の2023年3月期第2四半期の業績とこの間の同社の取り組み、あわせて2022年12月で同社社長に着任してから3年目となった五十嵐社長にこれまでの同社の歩みを振り返ってもらった。

 

 

経常利益重視の筋肉質に

着任時の赤字解消し反転攻勢

 

SBI損保では、これまで「近況報告会」の名称で年に2回(上半期と下半期)、それぞれ半期の経営成績とあわせて、同社の直近の状況と、その間の様々な取り組みについての説明会を、五十嵐社長自らが行ってきた。

 

この「近況報告会」は、その前半が半期における同社の経営成績の報告に、そして後半が当該半期における同社の具体的な取り組みの事例と、これに関連するトピックの紹介という構成になっている。

 

五十嵐社長がSBI損保の社長(代表取締役社長)に就任して、2022年12月でまる3年になる。五十嵐社長は着任当時赤字であった同社を、1年目には黒字に、さらに就任してから2年目、3年目についても黒字を継続している。

 

この間、五十嵐社長が主導して取り組んできたのは、同社をより“筋肉質”な会社に転換することであったという。具体的には、これまでの「収入保険料」あるいは「経常収益」といったトップラインの経営指標を重視する経営から「経常利益」、つまり“ボトムアップ”重視に転換することだったという。その結果(成果)は今回の同社の上半期の経営成績にも現われてきている(後述)。あわせて、同社はいわゆる「ダイレクト損害保険会社」という“ワク”(範疇)に捉われることなく、その事業範囲を商品開発あるいは販売チャネルの面で、SBIグループのシナジー効果を活かしつつ拡大しているのが注目される。

 

会社を筋肉質に体質改善

今回の2023年3月期第2四半期の経営成績については順調に伸展している。具体的には半年前、あるいは1年前と比較して数字の推移をみていくと、特に(前述のように)大きく変化しているという状況ではないが、今から1年前は「収入保険料」あるいは「経常収益」といった、いわば“トップライン”を伸ばすことに力を入れていたが、ここ1年ぐらいは「経常利益」のような“ボトムライン”の強化・伸展に力を入れ、会社の体質をより“筋肉質”に改造していくことに努めてきた。いずれにしても、順調に数字が伸びてきているというのが現在の状況だ。

 

特に、利益の面については、当社は開業以来、保険料については「業界最安値」をセールスポイントの一つにしてきた。つまり“低価格路線”でこれまでやってきたのだが、その結果「収入保険料」や「経常収益」といったトップラインについては、こうした施策が奏功することによって伸展してきたが、一方で、それに利益がなかなかついてきていないという状況だった。ちなみに私が着任した当時(2019年12月1日)は当社は赤字だった。これを着任から1年目になんとか黒字化することができた。それから1年後にはそこそこの黒字を出せるようになり、現在はそれなりの黒字を出せるようにまでなってきた。

 

経常利益が大きく進展

ところで、私が着任した直後の2020年3月末時点での保有契約は約109万件だったが(2022年9月末時点での保有契約件数は117.5万件)、今日の現状から当時を振り返ってみると、保有契約についてはそれほど増えているわけではないが、それに比べて「経常利益」は大きな伸展を示している。これが先ほど述べた、この間の当社の体質改善に向けた取り組み、当社の体質をより筋肉質にするための取り組みの結果であるといえる。

 

具体的な取り組みとしては、たとえば保険料率の見直しであるとか、あるいは当社の認知度、ブランド力のアップのための諸施策が挙げられる。

 

こうした施策を実施することによって、保険料が安い価格帯(保険料単価が比較的低いお客さま)から、現在では、より価格単価の高いお客さまへとシフトチェンジしてきている。

お客さまのポートフォリオを、保険料単価のより高いお客さまに「シフトチェンジ」することにより、契約件数の伸び以上に収益が向上してきているのが現在の状況だ。

 

ここは非常に重要なポイントであって、たとえば飲食店を例に取ると、1000円でお釣りがくるようなお客さまが中心であるような場合、こうした状況で売り上げを2倍にしようとすれば、お客さまの数を2倍にするしかない。しかし飲食店の場合、席数は限られているわけだから、たとえば50席しかないところに100人のお客さまを受け入れることは実際できないし、そうしようとすれば客席を増やすしかなく、それにはそれなりの設備投資、つまり費用が必要になる。また仮にお客さまの回転率を上げて売り上げを2倍にしようとすれば、調理現場はテンテコマイの状態になって、注文した料理を出すのが遅れたりする等、十分なサービスの提供ができなくなる。

 

「3年間、ダイレクト損保らしからぬことをやってきた」

 

単価アップで生産性向上

保険会社についても同じことが言えないだろうか。たとえば保険会社においてお客さま(契約者)が増えてしまうと、当然のことながら契約者からの問い合わせも増えることになる。“たとえ”としては必ずしも適切ではないかもしれないが、たとえば100人の契約者のうち、10人が交通事故に遭うとすれば、契約者が200人いれば、20人が交通事故に遭うことになる。

 

さきほど挙げた飲食店の例でいえば、お客さまの数をただヤミクモに増やしてしまうと、それに応じて注文(料理)の数も増え、それにかかわる手間も増えることになる。逆にお客さまの数が適切に増えていけば会社としては、十分なサービスを提供することができることになる。

 

当社の場合は、こうした契約者は大きくは増えないが、保険料の単価は上がっている現状下にあって生産性は向上しているという状況だ。

ということで、実は当社はこの3年間で従業員の数をほとんど増やしていない。もちろん従業員の数を増やして、より多くの契約者に対応していくということも考えられるが、出費も増えることになるし、限られた人数で対応することになれば、サービスの質が低下することにもつながりかねない。

 

とにかく、単価の高いものを注文してもらえるようにすれば、注文の数もそれほど変わらないので従業員をそれほど増やさなくてもいい。したがって、単価の高いものを注文してもらえるようにすれば、これが飲食店であれば、お客さまはゆったりと、その飲食店で過ごすことができるし、相応のサービスを「受けることもでき、さらにより多くのお金を落としてくれるようになるだろうし、リピート率も高くなる。

 

保険でいえば顧客単価(保険料)のアップがサービスの向上につながり、さらにそれが継続率(飲食店でいえば“リピート率”)のアップにつながるということになる。

当社では、こうした考えに基づいた取り組みを実施することにより、結果を出せるようになってきた。

 

認知度・ブランド力向上

一方で、こうした施策をより実効性のあるものにするためには、当社の認知度、あるいはブランド力の向上に取り組んでいる。具体的には、積極的にテレビやラジオの番組のスポンサーになることで、消費者の当社に対する認知度向上に努めている。たとえばどんなに素晴らしい商品やサービスを提供していても、それが一般に広く知られていなければ意味がない。とにかくこうした取り組みによって、広くSBI損保のことを知っていただき、安心して当社の保険に加入していただきたいと考える。

 

たとえば現在、TOKYOFMの「TOKYOこどもTIMES」(毎週土曜日放送)という番組のスポンサーをしているが、その中で私が番組MCと対談する中で、自動車保険の必要性と当社のPRを堅苦しくなることなく話すことができた。

こうした取り組みを通して、当社の認知度、そしてブランド力をアップするための企業努力をしている。

 

こうした取り組みの結果、これまでは単に保険料が安いということで、たとえば自動車保険等の比較サイトを通して当社の保険に加入するというパターンが多かったのだが、今では真に信頼できる保険会社であると評価して、当社を選択してくれるお客さまが増えてきている。

 

こうした認知度、ブランド力を向上するための取り組みとあわせて、最近では、たとえば新生銀行の当グループ入りであるとか、地域(地方)金融機関とのタイアップが進んでいる中で、新聞やニュース等を通して「SBI」という名称が広く知れわたるようになっている。ちなみに、新生銀行の当グループ入りにより、大きなシナジー効果も出てきている。

 

地方創生への協力

テレビやラジオによる当社の認知度、ブランド力アップの取り組みとあわせて、地方創生の一環として、将来の当社のファンを育てるべく、高校生による「エコノミックス甲子園」(全国高校生金融経済クイズ選手権)の大分地方大会を主催している。こうした取り組みを通して、大分県民のみなさま、さらに教育に携わっている方々に対してSBI損保を知っていただき、かつ当社が若者の教育(金融教育)の普及に注力していることを理解してもらうことで、当社を選んでくれる人が増えていくことにつながっていくものと考えている。

 

たとえば「エコノミックス甲子園」に参加した高校生が将来、自動車を運転することになったり、家を購入したりして、保険が必要になった時には間違いなく当社のことを思い出してくれるものと思う。また、あわせて「エコノミックス甲子園」に参加した高校生を応援する親御さんたちにも当社を知ってもらえることだろう。こうした一連の活動も、業績を底上げしている目には見えない原動力になっているのではないかと考えている。

 

ダイレクトの枠を越え

地域金融機関や新生銀行との提携、投資している企業とのアライアンス等の全てが積み上がって現在の当社の形になっている。そういった意味では、ダイレクト系の損害保険会社らしからぬことをこの3年間やってきた。ダイレクト損保というと、ひたすらインターネットを販売チャネルにして、たとえば保険料の価格競争的なところに経営資源を集中してきたと一般的には考えられている。

 

あるいは販売商品を自動車保険などに限定して、そこに集中して事業を展開しているのに対して、当社では、こうしたダイレクト損保本来の業務をしつつ、地域金融機関や新生銀行との取り組みを推進してきたし、保険商品の品揃えについてもこの3年間で充実してきた。具体的には、たとえば2022年には法人向けの自動車保険の販売をスタートした。また、医療保険についても、これまでは「がん保険」一本だったが、2021年度には新しいスキーム専用の「健康口座」という実損填補型の医療保険を発売している。

 

この3年間、保険商品の品揃えも増やし、かつ販売チャネルも多様化し、それから価格(保険料)の高い安いではなく、当社のブランド力をより向上させるための様々な取り組みを行ってきた。その結果、当社はダイレクト系損害保険会社のイメージからはかなり離れることになった。

 

3面 中間決算

 

少額短期保険業界

2022年度中間期決算概要

 

日本少額短期保険協会が、少額短期保険業界の2022年度中間期の決算概況を発表した。それによれば保有契約は前年同期比で52万件、同じく収入保険は37億円の増加、業者数も115社までに増える等、大きく伸展している。

 

4面 孤独死

 

日本少額短期保険協会

第7回 孤独死現状レポート③

 

日本少額短期保険協会内に設けられている「孤独死対策委員会」が公表した、第7回「孤独死現状レポート」の概要を紹介する第3回目。今回はコロナ禍の下における孤独死の実情について紹介する。

 

5面 営業情報

 

デュアル営業時代に磨くセールスリテラシー

データベースの使いこなしがDX化の第一歩

 

せっかく収集してきた顧客情報も活用されないまま死蔵・放置されていたのでは意味がない。そこで今回は、集めた情報をデータベース化し、それをどうビジネスに活かすか、あわせてそれがDXとどう繋がっていくのかを紹介する。

 

6面 育成

 

育成トークセッション

採用の視点・地区活動の視点を見直す

 

採用した新人をどう育てていけばいいのか。残念ながらその答えはないのが悩ましいところだ。生保営業にとって「育成」はいわば永遠の課題だ。そこでベテラン組織長3人に、育成の経験談、指導法等を披露してもらった。

 

7面 介護

 

朝日生命

自身の老後・介護に関する意識調査②

 

朝日生命による、介護についてのインターネットによるアンケート調査結果を紹介する第2回目。今回も引き続き、「自分の老後・介護についての意識調査から」その一部を紹介する。

 

8〜9面 販売確認

 

ランクアップチェックシート

税制や金利の流れの変化を提案に生かす

 

税制改正大綱の内容が明らかになった。相続税、あるいは贈与税に対する課税の強化が謳われている。この税制改正とあわせて、2023年の生命保険の募集環境は大きく変わる。こうした状況にどう対応していくか整理する。

 

10〜11面 年頭所感

 

新春トップメッセージ

 

10面:T&Dホールディングス、太陽生命、大同生命、T&Dフィナンシャル生命、住友生命

11面:日本生命、富国生命

 

12面 採用・育成

 

組織長への道

目標を高く持ち仕事は常に追い込め

 

組織長の狩谷さんは「目標を高く持ち、仕事は常に自分を追いこんでいく」というチャレンジ精神の持ち主。こうした信条で後継者を育て上げてきた狩谷さんは、現在、3度目の組織分離に挑戦中だ。

 

 

 

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