大型連休後には感染者が一時急増したものの、その後落ち着きを取り戻しつつあるように見える新型コロナ感染症ではあるが、未だに予断を許さない状況にある。最初にわが国において新型コロナウイルスの感染者が確認されてから2年以上を経過。生命保険業界ではこの間、給付金で約1146億円、死亡保険金で約1212億円(22年3月末現在)を支払ってきた。このような中、一般社団法人 生命保険協会(高田幸徳会長)は4月15日、コロナ禍において様々な取り組みを進めてきた経緯について、今後の危機管理に活かすとともに「ポスト・コロナ」に向けた生命保険協会会員各社のデジタル化等への更なる取り組みを後押しする。「新型コロナウイルス感染症を巡る生命保険業界の取組み報告書」を作成、公表した。
生保協会によれば、コロナ禍において未知の対応が求められる中、日本における新型コロナウイルス感染症の感染拡大から2年以上を経過した年度の節目となるタイミングで、これまでの生命保険業界の取り組みについて取りまとめられたという。なお、同報告書では、新型コロナウイルス感染症への対応の他に、コロナ禍の状況下において促進された生命保険業界の「デジタル化」の取り組みや海外主要国の状況についても整理し、生保協会会員各社の取り組みの参考に供するとともに、生命保険業界としての後世の危機管理の一助とすることも視野に入れて作成されたものであるという。
報告書の公表にあたって生保協会では「ウィズ・コロナの時代、そしてポスト・コロナの時代においても、お客さまに信頼され、確かな安心をお届するという生命保険業界の役割を果たし続けられるよう、当会では今後とも会員各社とともに各種取り組みを推進してまいります」としている。
「コロナ禍」(パンデミック)という未曽有の事態に対して、生命保険業界ではどのように対応してきたのであろうか。
本紙では、この「報告書」の中から、特に新型コロナウイルス感染症に対するわが国の生命保険業界の対応、その中でも特に顧客(契約者等)に対するこの間の施策、対応を中心に、その概要をとりまとめてその一部について紹介する。
なお、この「報告書」の構成は以下の通りとなっている。
1.新型コロナウイルス感染症を巡る動向
2.生命保険業界の主な取組み
生命保険協会の主な取組み
会員各社の主な取組み
3. 生命保険業界のデジタル化の取組み
生命保険協会の主な取組み
会員各社の主な取組み
4.海外主要国の状況
新型コロナウイルス感染症を巡る動向
生命保険業界の動向(新型コロナ対応)
生命保険業界の動向(デジタル化対応)
5.おわりに
⑴生命保険協会における新型コロナウイルス感染症対応体制
①生命保険協会では、新型インフルエンザ等への対応について「新型インフルエンザ等対策要綱」を定めており、2020年2月、この「要綱」に基づき「新型コロナウイルス感染症にかかる協会対策本部」(以下「協会対策本部」)を設置。
②生命保険協会長を本部長とする「対策本部役員会」(構成員:副会長、常勤役員)で緊急時の対応策を協議・決定。
なお「協会対策本部」での主な決定事項は次の通り。
あわせて、緊急事態宣言発令時などの迅速な意思決定が求められる状況では、対策本部役員会で事前に対策の方向性を協議し、その決定を本部長に一任する旨を決議した上で対応している。
⑵協会対策本部で実施した主な対応(略)
⑶感染防止に向けた取組推進
①感染防止と必要な業務の継続ができるよう、2020年5月に生命保険協会において「新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」を策定し、基本的な感染対策について会員各社の参考に供している。以降、必要に応じて関係各省庁とも連携を図りながら同「ガイドライン」の改正を適時実施。
②また、会員会社の取組みに関してアンケートを実施し、取組事例を共有することで取り組みを推進。
⑷「お客さま」向け特別取扱いの実施
①生命保険各社では、緊急事態宣言が発令された際に、当該区域の契約者から申し出があった場合に、保険料払込猶予期間を最長6カ月延長する特別取扱いを行った。
②また、契約者または保険金等受取人からの申し出により、保険金・給付金および解約返戻金・契約者貸付の請求にかかる必要書類の一部省略等に関する特別取扱いを行っている。
【特別取扱いの申込状況(2022年3月末時点)】
表1の通り。なお、表中、
注1:うち「特別取扱適用中」は約3.7万件
注2:貸付金額は約6309億円
表1 特別取扱いの申込状況(2022年3月末時点)
項目=2020年3月〜21年3月合計/2021年1Q/2Q/3Q/4Q/合計/累計
⑸保険金等の支払状況
【保険金等の支払状況(2022年3月末時点)】
表2の通り。なお、表中、
注:「みなし入院」は病院以外の宿泊施設・自宅での療養を指し、⑹に記載している「みなし陽性」の場合や神奈川県の「自主療養届出システム」の利用者への入院給付金も含む。
⑹新型コロナウイルス感染症にかかる入院等への対応
①⑸のとおり、新型コロナウイルス感染症罹患者への特別取扱いとして、会員各社において「みなし入院給付金」を取り扱っているが、新型コロナウイルス感染症の「第6波」では、感染者急増による医療逼迫を解消するため、療養に関して厚生労働省や一部自治体により、表2の通り新たな取扱いが示された。
②これに対して、生命保険協会として関係省庁や自治体と協議を行い、会員各社での支払可否の判断に必要となる情報収集等を行って情報を共有し、各社にて支払可否の判断を行っている。
【新型コロナウイルス感染症罹患者の療養】
表(略)
表2 保険金等の支払状況(2022年3月末時点)
項目=2020年3月〜21年3月合計/2021年1Q/2Q/3Q/4Q/合計累計
■協会会員各社の主な取組み
⑴会員会社による主な取組事例
•会員各社では、表(略)に示した通り、新型コロナウイルス感染症を踏まえた「お客さま」向けの特別取扱いを行っている。
•前出の「⑷ 『お客さま』向け特別取扱いの実施」の項でも紹介したように、保険料の払込猶予期間を延長する取扱いについては、生命保険協会として会員各社に実施を促し、取扱対象契約のない一部の会社を除き、全ての会社で実施している。
①取扱対象契約のない等を除き、全ての会社で実施している取り組み(概要)
表(略)。
⑴会員会社による主な取組事例(感染予防対策:「お客さまへの対応」)
会員各社では、感染拡大防止を図るため「お客さま」との接点においては、デジタルツールを用いた非接触での営業・アフターフォローを積極的に活用するとともに、対面や来店を希望する「お客さま」に対しても、最大限の感染防止対策を実施している。
①営業・アフターフォロー
②来店窓口
③イベント
なお、生命保険協会では、コロナ禍下にあって、医療現場の最前線で尽力している医療従事者などへの支援として、2020年5月に生命保険協会として会員会社から資金を集め、10億円の寄附を実施した。寄付の内訳は次の通り。
一方で、生命保険協会は社会貢献活動の一環として待機児童問題の解消へ貢献することを目的に2014年度から保育所・放課後児童クラブに対する「子育てと仕事の両立支援に対する助成活動」を実施しているが、2020年度は助成金額を2500万円から5000万円に拡大して実施した。
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響に対する支援として、衛生設備等購入資金や事業資金等を「助成金使途」の対象に追加するとともに、助成金総額を前述のように当初予定の2500万円から5000万円に増額し、全国の保育所・放課後児童クラブ、過去最大となる212施設への助成を決定した。
(関連記事16面)
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