第59代生命保険協会長に就任した高田幸徳住友生命社長は7月16日、東京都千代田区の生命保険協会で記者会見を開催、所信を表明した(本紙8月13日号概報)。
この間、膨大な犠牲者を出すとともに、世界規模で社会・経済に深刻な影響をいま現在も与え続けている新型コロナウイルス感染症は、ようやくワクチン接種が軌道に乗りつつあるとはいえ、一向に収束の気配が見えないまま、さらに新たな“変異種”の出現により、先行きが一層不透明な状況になっている。
このコロナ禍については、生命保険業界も大きな影響を受けることになったが、それに伴うドラスティックな環境変化の中で、今後どのような対策や対応が講じられていくのか。また、コロナ禍の中にあって、生命保険協会ではどのような施策を打ち出し、また今後打出していこうとしているのか。前号に引き続き、今回は記者会見における質疑応答(一部)を中心に紹介していく。
高田協会長は、「未来へと続く安心社会の実現に向けて」と題して所信を表明。その骨子は、「足元での新型コロナウイルス感染症拡大に加え、人生100年時代の到来やSDGs・気候変動への取り組みなどの長期的な課題を踏まえ、顧客本位の業務運営を推進しつつ」、以下の3つの項目を軸に取り組んでいくというもの。
具体的には次のとおり。
新しい時代における生命保険業界の役割の発揮
豊かで健康な人生の実現に向けた貢献
事業の健全な発展に向けた基盤整備
の3点。
高田会長は、「これらの取り組みと顧客本位の業務運営の推進に不断の努力を重ねながら、お客さまからの信頼を得て、未来へと続く安心社会の実現に貢献していけるよう、この1年間、全力で諸課題に取り組んでまいります」と、所信表明を締めくくった。
なお、今年度の取り組みの軸として挙げた3点について、その具体的な内容とスケジュールについての質問に対して、概要次のように説明した。
新型コロナウイルスに関する報告書について
具体的には、これまで1年余り取り組んできたが、例えば保険料払込猶予期間の延長や貸付金利減免などの特別取扱い、そしてデジタル化をはじめとした感染防止と業務継続の両立、こういった取り組みを、私が会長在任中をめどに報告書という形で取りまとめたい。さらには、日本のみならず、海外の保険会社でのさまざまな取り組みの事例についてもまとめ、後世にわたるパンデミックに対する生命保険業界の取り組みという形で残していきたいと考えている。
保険教育動画について
前任の根岸秋男協会長は、高校生向け保険教育推進委員のモデル事業動画を作成された。今年度は対象層を広げ、中学生ぐらいでも気軽に見られる、あるいはそれ(保険教育動画)を見る機会を設けるということで、アニメーションによる保険教育動画を作成する。その公開にあたっては、幅広い層の方々にご覧いただきたいということを踏まえて、協会の「You Tube」チャンネルなどを使って公開予定だ。
SDGs、持続可能な社会の実現について
特に生命保険と関連の深い、健康寿命の延伸、そして高齢社会、それから昨今注目度の高いサステナブルファイナンスという、この2つのテーマについて、シンポジウムの開催を考えている。具体的には、有識者による基調講演あるいはパネルディスカッションを予定しており、業界の取り組みを広く皆さまに知っていただくとともに、有識者の知見も借りて、私たちの理解を深めていきたい。これによって、協会の取り組みもさらに進めていきたいと考えており、それぞれ、具体的、詳細についてはこれからだが、おおむね2022年の春ごろには実施、各々公表を考えていきたい。
Q ESG投融資やスチュワードシップ活動を通じた持続的な経済成長に貢献していくとしているが、これまでの取り組みを整理していただきたいのと、さらなる推進に向けて、何か取り組みを強化するのか。
A これまで協会としては、「ESG投融資ガイドライン」を策定し、会員各社のESG投融資を後押ししてきた。具体的には、スチュワードシップ活動ワーキング、あるいはESG投資ワーキンググループを設置し、例年、提言レポートの作成や協働エンゲージメントに取組んできた。
このワーキンググループによる協働エンゲージメントは、11社が協働して2017年度から行っている取り組みだ。
協働エンゲージメントの具体的な取り組み内容だが、2020年度は気候変動の情報開示の充実、ESG情報の開示の充実、そして株主還元の充実という3つのテーマで、上場企業171社を対象に実施している。
その中で、特に気候変動の情報開示充実に関して、温室効果ガス排出量上位50社全社に対して、気候変動に伴う経営上のリスクと機会の定量・定性分析とその開示、そして温室効果ガス排出量の削減の方向性を打ち出し、この2つを要望し、“脱炭素”に向けた企業の一層の取り組みと開示を後押しする活動を行っている。
今年度についても、この協働エンゲージメントを引き続き行っていこうと考えており、内容のレベルアップや詳細についてはこれから検討していく。
Q 内容のレベルアップというのは、現状想定できる範囲で、例えばどういうものがあるのか。
A 今年度についてはこれから検討していくので、まだ具体的に何か申し上げられることはない。
Q コロナ禍でデジタル化の取り組みが進展する中で、「対面」を重視している営業職員の役割はどのように変化してきているのか。また今後、どのように競争力を確保していくのか。
A デジタル化が進んだ一方で、あらためて「人」が提供する価値も認識されたのではないかと思う。デジタル化については今後も進むものと思うが、引き続き営業職員によるコンサルティングやアフターサービスが重要だという考えは会員各社共通と思われるし、安心を提供できるよう教育を徹底していくものと思う。
個社としても引き続き、お客さまに寄り添うサービスを提供できるよう、営業職員の教育を徹底していきたいと考えている。
Q 「かんぽ生命」による自社株買いが実施されたが、まだ完全民営化には程遠いと思う。この事についての受け止めを聞かせてもらいたい。
A かんぽ生命による自社株式の取得に伴って、日本郵政におけるかんぽ生命の議決権保有率は49.9%になることとされているが、現状ではかんぽ生命に対する実質的な政府出資が存在しているし、また完全民営化に向けた道筋も示されていないため、公正な競争条件が確保されているとは言えないと考えている。
こうした状況においては、かんぽ生命の加入限度額引上げや業務範囲の拡大は容認できないと考えており、協会としては引き続き、“公正な競争の確保”という観点で、完全民営化を求めていく。
Q コロナ感染者が再拡大しているが、昨年度に取り組んだ対応に加え、新たに考えられている対応が、何かあったら聞かせていただきたい。
A 一部の会社では、ワクチンの職域接種も進めるなど、感染予防に各社取り組んでいる状況だ。協会としても、引き続き従来の取り組みを継続していくが、今年度については、冒頭で申し上げた「コロナ報告書」を作成する予定で、今回のコロナ禍の対応を、後世の参考にできるよう形にしたいと考えている。
Q 東京証券取引所の市場区分が再編されるが、これについての受け止めを聞かせてもらいたい。
A 市場区分の見直しによって、企業の新陳代謝の促進やガバナンスの向上が見込めることから、協会としても評価できるものと考えている。
影響としては、プライム市場には相応の流動性が求められているので、政策保有株式などの持ち合い解消などが一段と進んでいく可能性があると見ているところだ。
実際の会員各社における投資にあたっては、各社総合的に投資判断を行っていくものと考えている。
Q SDGsで掲げられている「すべての人に健康と福祉を」という目標に向けて取り組んでいくとの話があったが、中でも健康寿命の延伸や高齢社会への対応について、今年度、特に力を入れて取り組むものがあれば教えてもらいたい。
A 「すべての人に健康と福祉を」という目標は、生命保険業界にとって親和性の高い分野で、昨年度は認知症に家族で備えていただくための消費者向け情報冊子を作成し、周知を進めてきたほか、今年の7月1日には契約照会制度をローンチし、ご契約者などが認知症になられた、あるいはお亡くなりになった際に、ご家族などから保険契約の有無について協会に問い合わせすることができる仕組みも整えた。このサービスを遂行していくことが一つのポイントだ。
さらに、今年度の取り組みとしては、先ほど申し上げたSDGsシンポジウムのテーマに健康寿命の延伸や高齢社会を掲げ、業界取り組みの更なる推進や、多くの皆さまの理解促進につながる機会を提供していきたいと思っている。
こうした取り組み以外にも、昨年度は政府への提言書も作成しており、引き続き、人生100年時代における対応を続けていきたいと考えている。
Q 「金融サービス仲介業」が生命保険業界に与える影響について、どのように考えているか。
A 保険のみならず、銀行、証券など各金融分野において、金融サービス仲介業という新しいチャネルが増えることにより、お客さまにとっては商品やサービスを検討する際の選択肢が増える、また、金融に関する認知度や理解度が向上するという点について前向きに捉えており、市場全体の活性化につながるものとして評価している。
一方、事業への参入や商品の供給については、個社の戦略によるところもあるが、各社が引き続き切磋琢磨しながら、様々なチャネルを通じてお客さまへより良い商品、サービスを提供していくよう、尽力していくものと考える。
Q 生命保険協会としては、何かアクションを起こす予定はないのか。
A 事業開始に向けては、金融サービス仲介業者の自主規制などの整備が進められているものと認識しているが、生命保険分野の金融サービス仲介に関しては、生命保険協会も適宜情報提供や意見交換を行っているところだ。
A (生命保険協会 伊藤理事事務局長) 生命保険協会の取り組みに関して、少し補足させていただくと、金融サービス仲介業者には、当会の資格試験を活用していただくことで、リテラシーを担保するという点での協力はさせていただく。
Q 「代理店業務品質SG」に関して、業務品質の評価基準の検討状況について教えていただきたい。
A 代理店業務品質SGでは、年々影響力が高まる代理店マーケットの課題を解決するために、代理店の業務品質について議論を続けて、2021年3月に「業務品質評価項目・基準案」を公表したところだ。
この「業務品質評価項目・基準案」の精緻化を図るために、2021年5月から8月にかけて、代理店の実際の取り組みを把握・検証する「検証トライアル」を実施している。
現在、「評価項目・基準案」が実態とかけ離れた内容・水準となっていないか、評価にあたってのエビデンスが具体的に確保されているかなどといった検証を進めているところで、代理店や様々な関係者と対話を重ねながら、項目・基準のブラッシュアップにつなげていきたいと考えている。
三井住友海上あいおい生命では、介護や認知症についての啓発活動や情報発信を積極的に行っている。同社は、日々進化する医療について分かりやすく有益な情報を伝えながら生命保険を普及していくことが社会的使命の一つと考えているという。
サイバー攻撃の未然防止に必要な「サイバー評価」「セキュリティサービスの導入支援」をパッケージ化した中小企業向けの「サイバー保険」。複数のセキュリティベンダとの協業により完成した。
今回は健康保険が給付の対象としていない「入院・治療費」について見ていきます。「病床」は5病床に1床で差額が発生するといわれています。その額は1日あたり平均8000円。保障の必要性を浮き彫りにしていきます。
今年の4月から、70歳までの「就業確保措置」または「創業支援等措置」に定められている、いずれかの措置を講ずる努力義務が定められています。その概要と関連する「65歳超雇用推進助成金」について解説していきます。
厚生労働省が7月に公表した「令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、過去1年間に「メンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者がいた」または「退職した労働者がいた」割合は9.2%となっています。
短期と長期の就業不能状態を幅広く保障する収入サポート保険。身体障害状態などになった場合、長期収入サポート月額給付金を支払う。この給付金は、再就業可能状態であっても保険期間満了まで支払う。
変額保険の特別勘定の一部について、資産運用関係費用(信託報酬率)を引き下げた。また、介護・認知症が社会問題となる中、将来の保障の選択肢として一時払介護保障付終身保険への変更を追加した。
仕事にもようやく馴れてきた頃、夫が「くも膜下出血」で急逝するという不幸に遭遇する。以来、その時手にした保険金にも助けられ、全国でも指折りの優績者に登りつめた神津雅子さんの「保障を売る」に賭けた人生をたどる。
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