2021年6月11日 3011号

 

日本生命

ESG投融資をなぜ強化するのか?

 

ESGインテグレーション最重視

「エンゲージメント」と両輪で後押し

 

ESG投融資の視点はこれまで以上に投資先企業の価値に直結する重要な要素となる。ESG投融資を特別視するのではなく、資産運用の中核の一つの据えて取り組みたい──。

 

日本生命4月23日、2021年度の一般勘定資産運用方針などを明らかにした。岡本慎一執行役員財務企画部長が説明した。

 

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、企業の長期的な成長のためにはESGが示す3つの観点が必要、という考え方が世界的に広まっている。

 

岡本執行役員は「創業以来、長期の負債特性と親和性の高い電力、鉄道などのインフラ事業への資金提供を行うなど、収益性、健全性だけでなく公共性に配慮した資産運用を長らく実施してきた。ESG投融資については長期投融資方針と同根をなすものと認識している」と力説。

 

ESG投融資の推進には様々な手法がある中で、投融資のプロセスにESGの要素を組み入れるインテグレーションを最も重要なアプローチの一つと位置付ける。資産ごとの対応は次のとおり。

 

〈株式、融資、社債〉

企業への投融資になるが、外形的な取り組みの有無だけでなく、対話などを通じて各企業ごとのESG取り組みを評価する。株式では各企業のESG取り組みが企業価値にどのように影響するか。融資や社債は企業の信用力にどのような影響を与えるか。このような観点からESG強化を投融資判断に組み入れる。

インテグレーションのプロセスを通じて行われた評価や評価の視点について投融資先の企業に伝える。これは「エンゲージメント」と呼ばれるプロセス。インテグレーションとエンゲージを重要な両輪と位置づけ、企業のESG取り組みを後押しする。

 

〈国債、ソブリン〉

国際統計やESG評価機関の情報をもとに、国の信用力にどのような影響を与えるかという観点で、投資判断に関して必要に応じて投資先と対話を行う。

 

〈不動産投資〉

環境や社会に配慮した建築基準を設け、各種第三者認証を取得。施工会社の選定ではESG取り組みの状況を確認する。また、グループ全体での運用力強化にも注力。

 

その一環として、ニッセイアセットマネジメントに国内生保のクレジット運用とオルタナティブ運用の機能、それに関わる運用人材を集約する。日生の資産移管は2021年度始に完了し、大樹生命の機能移管に取り組んでいる。

 

これによって、ニッセイアセットマネジメントはクレジット・オルタナティブ運用態勢で、国内有数の運用体制を持つ。同社の預かり資産は14兆円から29兆円(2020年12月)に倍増し、国内順位も8位から4位に上がる。

 

ESG投融資推進室を指揮者に

クレジット投資は「規模」を活用

 

 ESG投融資でインテグレーションとエンゲージメントを高めていくために、どのような体制を取っているのか。

岡本 「ESG投融資推進室」を新規に立ち上げ、ここが指揮者としての役割を担う。ESG投融資を特別な運用とは位置付けていない。クレジット、オルタナティブ、株式、債券、融資などすべてが ESG投融資に関わっていく。

 

 グループ運用態勢の強化で、クレジットとオルタナティブで国内有数な態勢になるというが、人員は何名規模になり、どのような点が優れているのか。

岡本 ニッセイアセットマネジメントへの機能移管によって、クレジット領域で40名、オルタナティブ領域で80名になる。

オルタナティブ領域への投資は1975年から開始した。伝統的な資産とは相関が低い、負債が長いという特徴を生かして、すぐには果実にはならないが、長期では利回り、リターンがいいものと位置づけ、30年、40年がかりでここまで持ってきた。

ニューヨーク、ロンドンの海外現法にもオルタナティブの人材を置き、グローバルなオルタナティブ体制を敷いている。

 

 グループ全体での運用力強化で資産利回りの向上を目指すということは、大樹生命の低い運用利回りを、上のほうにさや寄せさせる意味か、あるいは資産規模を拡大することで全体の利回りが上がるという意味か。

岡本 どちらかと言えば規模との関係で捉えてほしい。クレジット投資、オルタナティブ投資はまとめて買うことができない資産であり、社債は融資と同じだように1件1件を評価をして、審査を行い全体的なバランスを取る。

オルタナティブ投資も委託する運用者を1件1件インタビューし、過去のトラックレコードを見たり、地域や時間の分散など、全体のバランスを考えるので、非常に手間ひまがかかる。

大樹生命もクレジット投資、オルタナティブ投資に力を入れるというニーズがあり、日本生命、大樹生命、ニッセイアセットマネジメントの3社が一箇所に集まり、規模のメリットを生かすことで投資がしやすくなる。

 

 長期的には株式などもグループとして集約していくのか。

岡本 具体的な検討はしていない。クレジット投資、オルタナティブ投資は手間ひまがかかるという特徴があるので、ここを中心にしっかりと定着させたい。

 

 資本規制の導入もあり、円債を買っていかなければならないし、一方で収益確保のためにオルタナティブや外国株式に投資をするというスタンスが他社では見られる。アセットアロケーションと資本規制について、日本生命はどのように判断しているのか。

岡本 規制動向も重要な外部環境の一つだが、規制のために慌てて何かリスクを下げたりすることはしていない。規制に対する計画的な準備が進んでいるので、そこに目がけながら自律的、計画的にポートフォリオのアロケーションを変えてる。

前年度に大きく円債を積み増しをしたのは社債が中心で、2020年3、4月にコロナウイルス感染症が世界的に拡大したときにクレジットのスプレッドが大きくした局面で、投資利回りが高く信用力の高い銘柄も売られており、そこで積極的に買いに入った。結果的にそれが3兆数千億円の一部になっている。

 

2面 生保協会

 

生命保険協会

営業職員に関する情報をフィードバック③

 

生命保険協会が「顧客本位の業務運営」の観点から実施した、営業職員チャネルにおけるコンプライアンス・リスク管理態勢とその取組み状況等に関するアンケートの内容と、その結果の概要について紹介する。

 

3面 海外事情

 

最新海外保険レポート

ニッセイ基礎研究所 松岡博司

 

米国の独立エージェントの販売実績のほとんどは定額年金である。銀行とフル・サービスの大規模証券ブローカー/ディーラーも定額年金の販売が多い。一方、独立証券ブローカー/ディーラー、専属エージェント、ダイレクト・レスポンスは変額年金の販売のほうが多い。

 

4~5面 募集手法

 

社会保障の知識がなぜ生命保険の募集に必要なのか

⒁子供がいないと遺族基礎年金はもらえない?

社会保障アカデミー協会 代表理事 青木隆憲

 

遺族基礎年金(国年)は子供がいることが要件となるため、子供がいないともらえません。今回は対象となる子供の要件がどのようなものなのか、3つの例を挙げて学んでいきます。「社会保障クイズ」はQ45〜48までの出題です。

 

6面 法人開拓

 

法人営業のABC

医療費控除と医療費援助制度④

奥田雅也

 

医療費控除は「1月1日から12月31日までの医療費が10万円を超えないと利用できない」と、先輩から聞いた秋葉さん。池谷先生に確認すると「残念ながら、間違っています」と指摘されパニックに。さて、何が違っているのでしょうか。

 

7面 新商品

 

ライフネット生命

「働く人への保険3」

 

病気やケガで働けなくなってしまった「働く人」の仕事への復帰をサポートする。公的な制度と連動させるなど、就業不能状態の定義の変更、業界初となる「復帰支援一時金」、精神疾患就業不能一時金などを新設した。

 

 

8〜9面 FP販売

 

まるっとわかる!FPサプリ

事業を廃業する場合の経営リスク②

フコクしんらい生命 丸山浩

 

「廃業」というとネガティブなイメージがつきまといますが、廃業のタイミングがハッピー・リタイヤメントのカギを握ります。後継者がいない場合、事業はいずれ廃業することになります。どう準備をしていけばいいのでしょうか。

 

10面 商品改定

 

三井住友海上あいおい生命

「新収入保障保険」

 

介護年金の支払要件を、公的制度の要介護2以上から要介護1以上に拡大。また、健康診断の受診状況に応じて保険料の割り引き、保険期間満了年齢を最長80歳から90歳に拡大するなどの改定を7月に行う。

 

11面 新商品

 

東京海上日動あんしん生命

「あんしんねんきん介護」等

 

「あんしんねんきん介護」の別タイプとして、業界初となる「使わなかった保険料が戻ってくる」タイプも発売する。満期までの間、介護年金の受け取りがない場合、所定の年齢までに払い込んだ保険料が全額戻るのが特長。

 

[トピック]

 

保険ソフトウエア開発会社を米国に設立

あいおいニッセイ同和は4月、100%子会社「MOTER Technologies」を米国に設立した 。

「ソフトウェア・ファスト」の概念を取り込んだ保険ソフトウエアの研究開発が狙い。なお、ソフトウェア・ファストはソフトウェアを核として事業やサービス、プロダクツの開発を進める概念。保険ソフトウエアの特徴は次のとおり。

 

  1. 車載器にインストールし、リアルタイムにリスク分析・保険料計算を行うことができる。
  2. エッジコンピューティングを活用し、自動車から得られる膨大なデータから保険面で必要となるデータのみを抽出することで、データ処理コストの大幅な圧縮、個人情報漏洩リスクの軽減を実現。
  3. OTA 技術やAIを活用し、常に最新アルゴリズムによる最適なリスクを計算。

 

「テレマティクス技術のパイオニアとして、コネクティッド社会や自動運転社会、新たなモビリティサービスの普及、さらにその先にあるスマートシティ・スーパーシティ における将来のビジネスチャンスを見据えて、様々な先進技術を持つ企業との業務提携や資本提携も視野に活動していきたい」という。

 

スタートアップ企業「Upstream社」へ出資・業務提携

三井住友海上は、 イスラエルのスタートアップ企業「Upstream社」へ出資し、業務提携を行った。

Upstream社は2017年の設立で、コネクテッドカ ー・自動運転車向けの多層的・包括的なサイバーセキュリティソリューションの提供などに強みを持つ。同社は、Upstream社に取締役および駐在員を派遣し、高度で先進的なノウハウを研究、国内外で活用する。「商品・サービスの開発、保険金支払いの高度化、ビジネスモデルの創造につなげたい」という。

自動車産業は、コネクテッドカーの普及の拡大、自動運転車の社会実装などが近い将来見込まれる一方で、これらの進展に伴い、自動車へのサイバー攻撃の脅威が高まっている。

同社はこうしたリスクに対応し、自動車のサイバーセキュリティ対策に資する取り組みを強化するためにUpstream 社へ出資した。

 

 

 

制作 株式会社保険社 保険情報・ネットソリューション・チーム

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