2020年11月20日 2984号

 

日本生命

ESG投融資を強化

 

10、20年後の利回りへの重要要素

全資産でESGインテグレーション

 

しゃしん おかもとしっこうやくいんざいむきかくぶちょうESGは取引先企業の価値に直結する重要な要素となり、コロナ禍によって、それが加速的に進んでいる。中長期の資産運用にとって、ESGは単なる責任投資を超えたリスク低減やリターン向上に直結する重要な投資ファクターになる─。

 

日本生命は10月26日、2020年度下半期の一般勘定資産運用方針を明らかにした。岡本慎一執行役員財務企画部長(=写真)は、ESG投融資の重要性をこう強調した。

 

なお、ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、、企業の長期的な成長のためには、ESGが示す3つの観点が必要だという考え方が世界的に広まっている。

 

同社は、投資先企業と経営課題について対話をするエンゲージメントについて、今年度は対話先全社とESGに関する対話を実施。

また、株式だけではなく、国内社債のスチュワードシップの活動も開始しており「エンゲージメント手法を着実にレベルアップしている」と岡本執行役員。

 

テーマ投融資は2017年4月から20年9月までに累計8500億円を突破した。今年7月からはインパクト投資も開始。インパクト投資は、経済的リターンの獲得と同時に環境・社会へのポジティブなインパクトを創出し、その成果の計測を行うもので、今後も拡大させる。

投融資プロセスにESG要素を考慮する「インテグレーション」という手法については「もっとESGを進めていくのにあたり、重要なアプローチと位置付け、今後も力を入れる」。

 

これまで株式や社債などの一部の資産でインテグレーションを導入していたが、2021年4月からソブリン(政府や政府機関が発行または保証を行っている債券の総称)なども含めた全資産において、投融資プロセスにESGの観点を組み込んでいく。

 

この取り組みでは、外部の格付け会社のレーティングを参照したり、ESGのレーティングの高低だけで売買判断を行うものではなく、岡本執行役員は「コロナ禍で加速する産業構造の変化なども捉える広い枠組みと定義して、運用リターン向上に結びつくかどうか、運用リスクの低減につながるのかどうかという視点で総合的な評価を進めたい」と強調。

 

生命保険の資産運用は、長期の負債特性を活かして、電力、鉄道などのインフラ事業への資金提供を行い、公共性に配慮した運用を行ってきた歴史がある。

 

「ESG投融資は日生の投融資の基本である安全性・収益性、そして公共性という基本方針と同根をなす。それとともに、中長期観点から投融資判断を高度化するものと考えている」と期待を寄せる。

 

独自の評価軸を組合せ投資判断

国内から海外への分散が基本に

 

 ESG投融資では、海外投資、株式の投資プロセスでインテグレーションをしているが、不動産とソブリンの場合、投融資するかどうかの判断はどのようにするのか。

岡本 不動産では環境認証、いわゆる環境に優しい不動産に比重を移し、新規物件を作るとき、購入するときにはこのような物件に投資する。ソブリンでは、国際機関が出している格付けなどを参考にしながら、また、ESGの観点から独自の手法を織り交ぜながら取り組む。

われわれは長期投資をしているので、ESGの観点が10、20年後に割高・割安、利回りに影響を与える重要な要素になる。株式、債券、不動産、ソブリンなども工夫しながら全資産で取り組んでいる。

 

 ESG投融資は、ESGの観点を満たした上で利回りの高いものに投資する、ということか。

岡本 基本的にはそのとおり。ESGにしっかり取り組んでいる企業の社債利回りと、そうではない企業の社債がそれよりも高い利回り、例えば1%と1・1%の場合、どちらを購入するか。

他の条件がまったく同じなら、ESGの効果が0・1%に相当するかどうかを評価して、最終的な着地点として利回りが高いほうを選択する。ESGのスコアに優劣を付け、単純に「優」を買って「劣」を売るというやり方ではない。

 

 ソブリンに対する ESG評価はどのようにするのか。

岡本 米国債がいい例で、保有している米国債はESGだけでなく、ALMの中で分散投資をしているからだ。例えば、米国債がESG的に魅力がない、というときに全て買わないで売るのか。それは考えていない。ただ、米国債とユーロ債を比べるときに、単純に利回り、信用リスクだけで比べるのではなく、ESGの評価軸を入れることになる。

では、ESGの評価軸はどうするのか。ニッセイアセットマネジメントでは、企業を対象に環境はどう評価するのか、SやGはどう評価するのか、という一定のフレームワークがある。ただ、そのままでは国債や政府などに適用できない。

データはソブリンの開示だけではどうにもならず、それは世界銀行や国連がそれに準じたようなデータを出し始めているので、それと日生で取り組んでいる評価軸を組み合わせてスコアリングして、利回り、リターンという伝統的な指標と掛け合わせて考えていく。

 

 2025年から経済価値ベースのソルベンシー規制が導入される。どのように意識して運用しているか。

岡本 よりリスク・リターンの効率を上げていかなければいけない。リスクについては先行きの見通しに依拠する部分もあるが、大きくは国内資産から海外クレジットやオルタナティブと、国内から海外への分散を進めていくことが基本線になる。

特にオルタナティブ投資は、伝統的資産との相関関係が低いという特性があり、リスク・リターン効率の改善には魅了的な資産だ。国内株式はリスクの高い割には全体のリターンに対して厳しい見方もある。その意味では積極的に積み増しできる資産ではない。

長期債は、経済価値ベースのソルベンシー規制導入よりも、ALM運用の基本として長い保険負債と長い資産を一致させることには、変わらない。低金利が進む中でどのように長い資産に投資をするのか、ということになる。通貨スワップを付けなど、単純に国債を買うだけでなく、様々な資産をより工夫しながら長期化を進めたり、同時に運用収支の改善を進めたい。

(関連記事16面)

 

2面 経営スキル

 

体験的経営術

「アフターコロナ」に向け原点を振り返る

 

新型コロナ感染症が一向に収束の気配を見せない中で、対面募集が主流である生命保険営業の現場は大きな影響を受けているが、そんな時だからこそ、生命保険営業の基本原則についてあらためて振り返ってみたい。元ベテラン支社長がそのコツを伝授する。

 

3面 気候変動

 

東京海上ホールディングス

脱炭素社会への移行推進に貢献

 

気候変動に対する基本的な考え方をまとめた。取り組みや姿勢を明確にするために「気候変動に関する戦略、ガバナンス、 リスク管理、保険引受・投融資方針、各種活動他」に整理。また、ESG投融資方針を策定した。

 

6面 法人開拓

 

法人営業のABC

令和2年確定申告の改正点と節税法①

税理士 池谷和久

 

「生命保険料控除証明書」の電子化制度が10月から始まりました。まだ一部の会社に限られますが、電子化により事務の省力化が図られ、繁雑な作業からも解放されます。お客さまとの接点強化のチャンスにもなります。

 

7面 社会保障

 

社会保障なんでも相談センター

自己都合退職の失業保険について

特定社会保険労務士 園部喜美春

 

自己都合の退職はこれまで3カ月間の給付制限期間がありましたが,10月1日以降の退職から2カ月間に短縮されました。ただし5年間で3回以上退職すると、3回目以降は従来通り3カ月間となります。

 

8〜9面 販売支援

 

コミュニケーション・ツール

平成30年度「地域保健・健康増進

事業報告」からライフプランニング

 

市区町村が実施する健康診断の受診者数は12.3万人で前年比ほぼ横ばい。受診の結果、糖尿病の指導が必要だった男性は33.5%、女性が35.1%と聞くと、放置し発症させないよう健康増進の啓発活動を続けていきます。

 

10面 商品改定

 

第一フロンティア生命

「プレミアストーリー3」

 

「プレミアストーリー2」をリニューアルした商品で、資産を活かす2プラン「生前贈与プラン」「自分年金プラン」がある。「生前贈与プラン」は、贈与契約書の作成が不要で、毎年の贈与税の基礎控除を活用した贈与ができる。

 

11面 規定改定

 

SOMPOひまわり生命

「ネット給付金請求・LINEを活用した

給付金請求の取扱範囲の拡大」

 

これまでは手術給付金の簡易請求は、12種類の手術に限定していたが、公的医療保険連動型の医療保険かつ所定の要件を満たす場合、全ての手術で

取り扱いが可能となった。提出書類の内容により、診断書の提出を求めることがある。

 

15面 採用育成

 

組織長への道

時としてショック療法も必要

 

採用の誘いを断るために訪ずれた営業所で、応対に出た営業所長の人間的な魅力にほだされてその場で入社を決心した梅田さん。組織長になって以降は、人生の大先輩として職員を暖かく見守り、後進の指導と育成に取り組んできた。

 

[トピック]

 

ほけんの窓口がトヨタファイナンスと保険ショップ

ほけんの窓口グループ、トヨタファイナンシャルサービス、トヨタファイナンスの3社は10月15日、共同事業を開始することで合意した。

その第一弾として、10月30日にトヨタファイナンスを募集代理店とした保険ショップ「ほけんの窓口 名古屋駅前店」をオープン。

トヨタファイナンスは、トヨタの国内金融事業会社として、全国のトヨタ販売店と連携し、自動車のファイナンスやリースなどの販売金融事業やクレジットカード事業を展開。

共同事業では「地域のお客さまに寄り添って生活ニーズをサポートしていく」という事業方針のもとに、トヨタ販売店と連携しながら、地域密着型サービス(くらしの相談窓口)を提供する。

名古屋駅前店の立地は愛知県名古屋市西区名駅1丁目1番17号 名駅ダイヤメイテツビル1F。

 

栄養問題を重要なテーマとして債券を発行

日本生命は、世界銀行が発行するサステナブル・ディベロップメント・ボンドに約114億円を投資した。

同債券は、栄養問題を重要なテーマとして発行される世界銀行グループで初めての債券。同社としても初めての投資となる。

栄養問題(低栄養および肥満問題)は、途上国における乳幼児の死亡率や成人後の貧困率の高さ、保健医療コストの増大を通じ、各国の経済や人的資本に多大な影響を及ぼしている。世界銀行はこれらの栄養問題の解決に取り組んでいる。

 

通称「コロナ債」に約105億円を投資

住友生命は、 米州投資公社が発行する通称「コロナ債」に約105億円を投資した 。

米州投資公社は、新型コロナウイルスの影響に対応するために最大70億ドルの資金を提供することを予定。これには50億ドルの長期投資、20億ドルの貿易金融が含まれる。

同公社は、新型コロナウイルスの影響を受けた企業のうち、保健セクターおよび保健関連セクターなどに資金提供を行う。

同公社は131億ドルに及ぶ運用資産を有し、26カ国、385の様々な業種の顧客企業に対して、革新的な金融ソリューションとアドバイザリーサービスを提供。

 

 

 

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