2020年9月18日 2976号

 

日本生命

イノベーション開発室の最新動向

 

「人中心のイノベーション」創出へ

対外的には「Nippon Life X」

 

スタートアップ企業との連携を加速─日本生命は8月3日「Nippon Life X」の東京オフイスを東京・大手町ビルの「FINOLAB(フィノラボ)」に移転した。フィノラボは、金融デジタル革命を生み出すために開設されたオープンイノベーション拠点。イノベーション開発室の遠藤和宏担当課長(=写真)は「スタートアップ企業がオフィスを構え、いろいろな企業が訪問してくる。これまで以上に社外の情報ネットワークを拡大したい」という。

 

同社は8月3日に記者会見を開き、イノベーション開発室が手がける社内起業プロジェクト、イノベーション開発投資の最新動向を説明した。

 

まず、5年間のオープンイノベーションの動きは次のとおり。

 

  • 16年度=米国シリコンバレーに、調査を目的に駐在員派遣。
  • 17年度=シリコンバレーの人員を増やし、約1000社の情報収集、約40社と個別面談を行う。
  • 18年度=総合企画部内にイノベーション開発室を創設、100億円のイノベーション開発投資枠を設定。ベンチャーキャピタルへの投資を開始。
  • 19年度=ロンドン・北京への新規駐在員派遣。イノベーション開発投資枠を300億円に拡大。実証実験では営業職員向けのスマホアプリに適応できるAIのアバターの開発会社に投資など。
  • 20年度=イノベーション開発室の対外的な呼称として「Nippon Life X」を使用。「フィノラボ」に移転。そして、今年4月から社内起業プログラムを開始した。

 

「新規事業の種を社内から集めてはどうか」。清水博社長の発案で、これを通じてイノベーション文化・風土の浸透を図る狙いがある。

 

社内起業アイデア募集に423件

 

同プログラムで目指す新規事業領域は①子育て・教育②ヘルスケア③働き方・ダイバーシティ④金融・経済。

 

ここでの留意点は「人中心のイノベーションの創出」。デジタル化、オープンイノベーションでは、既存業務を人からコンピュータに置き換えることに関心が向きがちだが、遠藤担当課長は「いろいろな人の課題解決に取り組むという日本生命の本業との親和性の高い、人中心のイノベーションが大きな軸になる」と力説する。募集対象は全内務職員2万名。5月末が締め切りで423件のアイデアが集まった。年代も20代から60代と幅広い。

 

「結果的に、課長層の30代後半から40代前半の人から、いいアイデアが出てきている印象だ。ビジネスをよく知っている人たちなので……」

 

8月3日の段階で、20件が書類選考を通過。今後のスケジュールは9月半ばに中間選考を行い、10件程度までに絞り込む。さらに12月末までに最終選考を行い、数件に絞り込む。

 

今回選ばれなかった応募案件には、有望なアイデアがたくさんあり「ここはよかったが、この部分がもう少し欠けていた」「ここをもっと伸ばすと良くなる」と、詳細なフードバックを全ての案件に出した。

 

「落ちた人と、選考を通過した人が参加できるセミナーを開催し、それぞれのアイデアをブラッシュアップしてほしい」

「Nippon Life X」の山谷勇人課長補佐はこう結ぶ。

 

スタートアップ企業との接点作り

 

 シリコンバレーには2016年度から進出しているが、この4年間の成果をどう捉えているか。

遠藤 先端技術の現業への取り組みという意味では1件、大きなものがあり一定の成果は上がっている。投資領域ではVCへの投資を米国から開始をして、その延長で投資信託、個別企業への投資にまで広がっている。

次のステップでは投資した企業から、本業ないし新規ビジネスが生まれてくるところまで持っていけると、一定の成果と言える。ここはまだ発展途上の段階だ。

 

 現業への取り組みの「1件」とは。

遠藤 4月から営業職員にスマホ(NーPone)を配り、ロープレの練習台になるようなアバターを作り「あなたのプレゼンはここがよかった」「こんな改善点があります」とアドバイスする。この教育ツールのアプリが大きな成果だ。6月から全営業職員のスマホにこのアプリを導入した。

 

 非対面の営業スタイルという課題については。

遠藤 米国では損保が進んでいるが、インターネットで短時間に加入できる家財保険会社などが増えている。そこへの投資を通じて、非対面での販売手法の調査をしたい。海外事例のレポートも社内向けに出している。

 

 日本生命にとって、優れたスタートアップ企業を見つける「目利き力」はどのレベルか。どのように磨くのか。

遠藤 海外に対しては「目利き力」がないところから入っている。だからこそ、最初は海外のVCに投資を行い、その後に海外のVCとコラボレーションをしたファンドを設定し、そこから個別株投資をしている。慎重なアプローチを取っている。

国内では、子会社「ニッセイキャピタル」があり、毎年一定の資金でファンド設定を行い「シード」「アーリー」のステージ(ベンチャー起業の成長フェーズ)ではかなりリードが取れている。彼らのノウハウを教えてもらいながら、提携先を探している。「ニッセイキャピタル」を持っていることが国内においては強みになる。

 

  コロナ後のあり方も模索しているだろうが、米国の事例を含め、調査・研究テーマとして大きなウエイトを占めているか。

遠藤 現業へのトスアップの括りになる。そこが3分の1、デジタル保険の領域が3分の1、残り3分の1が新規事業につながる調査、というイメージだ。

 

 やはり、イノベーション推進室は20年度もスタートアップ企業との接点づくり、その強化が大きな役割になる。

遠藤 20年度はその部分が大きくなる。ヘルスケアの領域も事業化に向け、いろいろなプログラムを手がけている。スタートアップ企業の紹介やロンドンのスタートアップ企業の調査会社への橋渡しも行う。

 

【関連記事】

スタートアップの調査体制を構築

 

日本生命は2018年4月、総合企画部内にイノベーション開発室を新設して、100億円のイノベーション開発投資枠を設定。米国のベンチャーキャピタルへの投資を開始した。

 

19年11月には、イノベーション開発投資枠を300億円に拡大し、スタートアップ企業への投資も開始。

 

これまでに、コミットメントベースで7割の投資を実行。投資先は個別企業、ベンチャーキャピタル、投資信託など。ただし「研究・開発費」に近い位置づけで、リターンは副次的になる。

 

ビジネスパートナーとして「東大IPC」、米国の「PLUG AND PLAY」などがある。「東大IPC」は東大のイノベーションエコシステム拡大を担う。日生は20年3月に加盟。「PLUG AND PLAY」は、米国、日本、中国でスタートアップ企業のソーシング(ターゲット企業を選定し、さらに交渉)に活用している。

 

投資体制では「ビジネスパートナーの知見を借りながら、国内、欧米のスタートアップ企業に投資ができるようにと、調査体制を構築している」と遠藤和宏担当課長。

 

また、グローバル4極体制として、東京(15名)だけでなく、ロンドン(1名)、北京(1名)、シリコンバレー(8名)に拠点を持つ。19年度からロンドンと北京に設置。

 

「ロンドン、北京に拠点を持つところがユニーク」と指摘する遠藤担当課長はその背景を次のように説明する。

 

「北京はテンセントなどのメガIT企業がいろいろなプラットホームを提供して、アプリの中にミニアプリを作ったりしている。イノベーションやデジタライゼーションの主体がメガIT企業。これに対して、ロンドンは銀行、保険などがイノベーション回りのエコシステムの中心にある。それぞれ異なるエコシステムがあり、しっかりフォローする必要がある」

 

一時保育のニーズをマッチング

なぜ「社内起業」に応募?

 

社内起業プロジェクトで、まず20件の一つに選ばれた田中紗代さん(人材開発部課長代理)。一時保育利用者と、空きを抱えている保育園の一時利用枠のマッチングサービスの提供を提案。応募した動機や事業化への思いを聞いた。

 

◆ ◇ ◆

 

「日本生命の社員でなかったら、今どんな仕事をしたいか」

どんな案件を出そうか、と思った時にこのような発想から、自分が解決したい課題、自分ごととして困っていることをビジネスにできたら、と思い後輩と二人で応募した。

 

一時保育を利用したい人が、いま空いている保育園の最寄駅、条件などをスマホアプリで検索をして、申し込めるサービスができればいい。

 

私の周りの働くお母さんも、急に一時保育を使いたい時、何件も電話をして空きがないかをアナログで探している。手間も時間もかかり「一時保育はめんどくさいので利用しない」という人が多い。

 

直前まで後輩とは、内閣府の男女共同参画室に出向していた。働く女性にとっての不便さ、課題に対して何かできたら、という思いを持ちながら働いてきた。

 

社会的にテレワークで働くことができやすくなっているが、育児は女性に偏っているのが現実で、女性はいろいろな局面で何らかの選択を迫られている。このことずっと感じていた。

 

急な仕事が入ったけれど、一時保育で預けるところがなくて、他の人にその仕事をお願いせざるを得ない。

 

続けている趣味、習い事があるけれど、土・日に子供をどこかに預けて習い事をするのは難しいので、子育て期間中は我慢してしまう。「何かできたらいいな」というモヤモヤとした思いがあった。

 

社内企業プロジェクトは、保険ビジネスと少し離れていても、何か社会課題の解決にできるものがあれば提案できるプログラムだった。

 

事業化できることになったら、バックグラウンドが何もない中でやるよりも思い切ってできる。ぜひやりたい。

 

2面 苦情相談

 

生命保険相談室

コロナ禍中の苦情、前年比で18%減少

 

生命保険協会が令和2年度第Ⅰ四半期の苦情受付状況を発表した。今期(4月~6月)の苦情受付件数は877件で、前年同期(1,068件)より191件、17.9%減少、前期(1,227件)と比べては、350件、28.5%の減少となっている。

 

3面 コロナ対応

 

業績への打撃は「隕石衝突級!」

特定社会保険労務士 遠藤忠彦

 

中国の平安生命ではオンラインサービスの利用が増加し、これまでのデジタル投資が功を奏した。香港でも顧客への説明責任の要件を緩和し、電話による非対面販売を導入する。海外の保険会社や年金制度は「コロナ禍」にどのような影響を受け、どのように対応しているのか。

 

4面 新商品

 

justInCase

「歩くとおトク保険」

 

日常生活での「歩く」習慣により記録された歩数が、そのまま保険料割引に反映され、また、BMIの数値をアプリ上から提出することでも割引が適用される、日本初の医療保険。最大で52%割引される。

 

6面 法人開拓

 

法人営業のABC  エンディングノート活用法 79

中小企業なら休業手当の全額助成も

税理士 池谷和久

 

今回12月末まで対象期間が延長になった「雇用調整助成金(新型コロナ特例)」について改めて制度の内容を押さえておくとともに、健康保険、厚生年金の保険料が翌月から改定できるコロナ特例についても見ていきます。

 

7面 社会保障

 

社会保障なんでも相談センター

公的年金制度改正について

社会保険労務士 園部喜美春

 

「在職老齢年金」の改正を中心に解説していきます。65歳未満の支給基準額が28万円から47万円へ、65歳以上は払った保険料が年1回10月からの年金額に反映され、タイムリーになりました。

 

8〜9面 販売支援

 

コミュニケーション・ツール

2018年度「介護事業状況報告書」などからLP

 

2018年度の要介護(支援)の認定者は前年度比で17万人増え658万人になりました。裏を返せばその数だけ介護のスタイルがあり、その負荷をどう減らせるか、私たちの啓発・提案活動が試されています。

 

10面 新商品

 

オリックス生命

「Candle Wide(キャンドル・ワイド)」

 

死亡保障・高度障害保障に加え、特定疾病や身体障害、介護などのリスクにも備えられる外貨建ての終身保険。低解約払戻期間を設けることで割安な保険料になり、保険料払込期間経過後は高い貯蓄性がある。

 

11面 新商品

 

あいおいニッセイ同和損保

「タフ・見守るクルマの保険プラスS」

 

テレマティクス自動車保険で、2021年1月以降保険始期契約分から発売する。特長は、運転特性計測期間中の累計スコアベースの3段階で評価され、最良の評価の場合、8%の割引が適用される。特約保険料は月額100円。

 

[トピック]

 

「LINEWORKS」と「Zoom」を導入

住友生命は9月24日、ビジネスチャット「LINEWORKS」とWeb面談ツール「Zoom」を導入する。営業職員の新たな非対面コミュニケーション、コンサルティングのツールを活用して、新たな営業スタイル確立を目指す。

また、契約申し込みも郵送による手続きができるようにした。また、加入後には「スミセイダイレクトサービス」が利用できる。同サービスでは、契約者がインターネットで入出金の受け取り、住所変更などの手続きができる。

「新しい生活様式に対応した営業スタイルを確立して、お客さまの健康を守る取り組みを進めたい」という。

また「おうちVitality」も提供。屋内での健康増進サポートに関わる様々なコンテンツで「外出自粛などの影響により運動機会が減少する中、少しでも前向きに楽しく、健康的に過ごして欲しい」という。

 

生活習慣病の自己管理を支援するアプリ

大同生命は「Welby社」と業務提携を行ない「Welbyマイカルテ」を提案する。

同社は9月末から、糖尿病などで保険に加入できなかった人を対象に一定要件のもと、加入できる取り扱いを開始。合わせて「Welbyマイカルテ」を提案する。

Welby社はPHRサービスのリーディングカンパニーで、その一つ「Welbyマイカルテ」は、糖尿病・高血圧症などの生活習慣病の自己管理を支援するスマートフォン向けアプリ。

今後、同アプリを利用することによる生活習慣病の改善や重症化予防の効果について、両社で共同研究を行う。

 

中小企業向け「感染症BCP作成支援ツール」

三井住友海上、あいおいニッセイ同和、MS&ADインターリスク総研は、中堅・中小企業向け「感染症BCP作成支援ツール」を開発した。三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保の代理店から無償提供する。

支援ツールの特長は次の通り。

①解説編とひな形編で構成。解説編を参考に必要な項目を検討し、ひな形に入力するだけで感染症BCPに最低限必要な項目を網羅できる。

②企業内社員研修など、感染症予防に対する意識向上のための研修資料として活用できる。

③今後も起こりうる新たな感染症にも対応可能。

新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ「BCPを簡単に作成するための資料やひな形が欲しい」というニーズに応えて開発した。

 

 

制作 株式会社保険社 保険情報・ネットソリューション・チーム

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