2020年5月15日 2960号

 

第一生命

2020年度資産運用ポイント

 

円債は増加、金利リスク削減も

株安・金利低下・ドル高・原油価格下落

 

しゃしん かい うんようきかくぶちょう「ESGインテグレーションの本格化」を目指す年と位置付け、ESG分析高度化に取り組む──第一生命は4月22日「2020年度資産運用計画」を発表。甲斐章文運用企画部長(=写真)が説明した。

 

まず、マクロ経済などの環境認識では「足元のコロナ感染拡大による都市閉鎖の影響等を受けてリーマン・ショックを超える景気後退局面に入った」と指摘。

 

このような経済環境の悪化により、株安・金利低下・ドル高・原油安と、危機時に典型的な金融環境となっていることを踏まえ、2つのシナリオを想定。

 

メインシナリオは、各国の大規模な財政・金融政策によって景気が下支えされている間に、ワクチンが開発され、コロナウイルス感染収束期待が高まり、底這いながらも年度末に向けて景気が回復していく。

 

一方、リスクシナリオとしては、現状の金融環境悪化が企業のデフォルト増加などのクレジットイベントにつながり、金融市場全体で一層の信用収縮が起こり、より深い景気後退に陥る。

 

なお「今後についても、一層の景気悪化が見込まれる場合には、各国が追加の財政・金融政策対応を実施することを想定しているが、経済停滞の影響は極めて不透明であり、リーマン・ショック時のよに株価が2番底を試しにいくようなダウンサイドリスクには十分に留意する必要がある」という。

 

足元の金融市場を踏まえた資産運用では

  1. 資産分散の取り組み
  2. オルタナティブ投資の強化

を挙げる。

 

資産分散の取り組みでは、直接的なリスクヘッジ以外にも、資産分散の強化によるリスク低減を継続的に実施する。

 

オルタナティブ投資の強化については、19年度、20年度に組織を再編。2019年4月に「オルタナティブ投資部」を新設し、20年4月には同部に「リアルアセットファンド課」を設けた。

 

「収益力強化とリスク分散の観点から、不動産を含むオルタナティブ資産の残高を着実に積み上げ、運用ポートフォリオの資産分散を推進していきたい」という。

 

オルタナティブでは引き続き増加

 

各アセットごとの19年度の実績と20年度の計画は次のとおり。

 

〈円債〉

19年度は責任準備金対応債券を積み増したものの、社債の償還などで残高は減少。20年度は増加。責任準備金対応債券の積み増しや入れ替え売買などによる資産デュレーションの調整により、金利リスクの削減を行う。また、プロジェクトファイナンス、アセットファイナンスの投資を引き続き継続する。

 

〈ヘッジ外債〉

19年度は金利動向を踏また積み増しにより残高は増加。20年度は国内外の金利動向を踏まえて残高を機動的にコントロールする。

 

〈貸付〉

19年度は新規投資により残高は増加。20年度は新規投資により残高は増加の一方で、償還などにより概ね横ばい。

 

〈オープン外債〉

19年度は為替動向を踏まえた機動的な資金配分や相場の下落に備え、下値ヘッジポジションを積み増し、残高は減少。20年度はリスク許容度、為替水準しだいで残高を機動的にコントロールする。

 

〈国内株〉

19年度はリスクコントロールを目的とした売却などで残高は減少。20年度も成長株投資を継続する一方で、リスクコントロールを目的とした売却などで残高は減少。

 

〈外国株〉

19年度は株価動向を踏まえて残高を機動的にコントロールした結果、残高は減少。20年度はリスク許容度や株価水準しだいで残高を機動的にコントロールする。

 

〈オルタナティブ〉

19年度は新規ファンドへの投資により残高は増加。20年度も増加。ヘッジファンドはポートフォリオ全体のリスク分散につながるファンドへの投資は継続。プライベートエクイティではバイアウトファンド、ベンチャーファンド、インフラファンドへの投資は引き続き強化。

 

〈不動産〉

19年度は新規投資により残高は増加。20年度も引き続き残高は増加。

 

「ESG投資の基本方針」を設定

 

「第一生命のESG投資の基本方針」を設定した。

ESG投資の取り組みを一層力強く進めることにコミットするのが狙い。具体的な内容は次のとおり。

 

  1. 2023年度までに、全ての資産の運用方針や運用プロセスにESGを組み込むことを完了させる。
  2. 投資金額は、今後4年間で倍増以上に引き上げる。
  3. 社会課題解決に向けた企業の前向きな取り組みや行動変容を後押し。

 

2023年度は次期中期経営計画の最終年度にあたり、運用プロセスにESGを組み込むことで、気候変動リスクなどを踏まえた投資判断を行う。

 

「ESGリスクの低減と機会の収益化を通じて、収益獲得と社会課題解決を両立するポートフォリオを構築する」という。

 

投資金額については、2013年以降の7年間で累計5500億円の投資を行っているが、この進捗ペースを加速させる。

 

また、スチュワードシップ活動では、特に投資先企業との対話を通じて、社会課題解決に向けた企業の前向きな取り組みや行動変容を後押する。

 

同社は2015年にPRI(責任投資原則)署名。19年度には「気候変動の緩和」を重点テーマに加えた。

 

再生可能エネルギー関連事業やグリーンボンドをはじめとしたSDGs債に積極的に投融資するとともに、気候関連情報の体系的な統合評価手法を構築して、社内投融資ランクに反映させるなど、リサーチの強化も実施。

 

20年度は「ESGインテグレーションの本格化」を目指す年と位置付け、ESGアナリストの設置を通じたESG分析高度化等に取り組む。

 

内外金利さらに低下し厳しさ続く

 

質疑応答は次のとおり(なお、メールによる書面回答で行われた)。

 

◆ ◇ ◆

 

 今回の新型コロナによる金融市場、社会環境の激変によって、生保のALM運用はどのような部分に、どの程度の影響を受ける恐れがあるのか。

甲斐 保険負債の特性を踏まえ、長期・超長期の公社債を中核資産とするALM運用を基本戦略とし、保険負債と親和性の高い公社債での運用が基本という考えだ。

ただし、新型コロナの影響などを受け、世界的な金融緩和政策などで低金利環境は長期化しており、利回り確保も難しいことから、選別的なクレジット投資やインフラ分野を中心とした投融資拡大には継続して取り組む。

また、オルタナティブ資産・実物資産への投資を強化し、収益性の確保とポートフォリオのリスク分散にも継続して取り組む。

 

 2017年度に標準予定利率を引き下げ、3年が経過したが、これによって投資行動にどのような効果が現れているか。

甲斐 2017年度の標準予定利率引き下げ後も、内外金利はさらに低下するなど運用環境が厳しい状況は続いている。利回り確保のため、選別的なクレジット投資やインフラ分野を中心とした投融資拡大には継続して取り組む。

 

 金融市場のリスクコントロール強化策として「戦略的な保険ブロックの再保険活用を継続検討」とあるが、これは具体的に何を行い、なぜ、効果があるのか。

甲斐 過去に引き受けた保険契約のうち高予定利率の契約について、保険契約のリスクを分散する目的で再保険会社と結ぶ保険契約のことで、負債コストを低減するとともにALM上の金利リスクを低減させる効果がある。

 

不動産投資 賃料収入の安定性などを判断

 

 ESG投資の収益力を高めるためのポイントは何か。リターンの目標はどう設定するのか。東南アジアでの保険事業との関連性で、何かトピックはあるか。

甲斐 ESG投資に限ったことではないが、投資案件のリスク特性を適切に分析・把握し、リスクに見合ったリターンが確保可能な案件に選別投資する。

また、ESG投資全般の収益性の向上という観点では、今後ますますESG金融が発展・拡大していくことも重要と考え、第一生命ではESG投資の普及・促進活動にも注力している。

東南アジア保険事業と親和性の高い投資案件として、2019年10月に「インド輸出入銀行が発行するメコン地域向けディベロップメントボンド」に投資した。

この債券による調達資金は、メコン地域のインフラ整備事業、送電線敷設、水力発電所建設、鉄道設備近代化などに充当される。

第一生命グループは、インドおよびメコン地域で生命保険事業を展開しており、生命保険事業者としての側面に加え、機関投資家としての側面からも、これらの地域の人々のQOL向上に貢献するべく取り組んだ。

 

 不動産投資はどのぐらい増加するのか。不動産投資の高度化はどの程度進んでいるのか。

甲斐 他のアセットとの相関を抑えつつ、インカム収益を確保できるアセットクラスであるため、用途分散やタイミング分散を図りながら、良質な案件を対象に平準的にポートフォリオを構築することが重要と考えている。

また、現在の投資判断では賃料収入の安定性など、より厳格な評価を行っており、価格変動耐性の強いポートフォリオを構築している。

 

2面 業界動向

 

人材の流れが加速しても保険の役割揺るがず

エントラスト  山田博之社長インタビュー

 

コロナ禍で動きが止まっているように見えても「その後」を見越した人材のリクエストは絶えないそうです。人の流れから見た課題や方向性について語っていただきました。

 

4面 再保険

 

RGA 生保経営と再保険の役割15

先進医療特約Pをもっと高くしたい…

 

今では多くの生命保険会社で、医療保険に特約として付加されて販売されている「先進医療特約」。特殊な保険料計算方法を用いることから、この特約に対する再保険ニーズに対するリスクの引き受けは、再保険会社にとって決してやさしいものではなかったという。

 

6面 法人開拓

 

法人営業のABC

エンディング・ノート活用法71

持株会節税は保険営業の秘策

税理士 池谷和久

 

自社株の評価額について勉強を進めています。今回は「純資産価額方式」で、評価額が100億円だった会社の社長さんを例に「従業員持株会」の節税について、どいうメリットがあるのかを考えていきます。

 

7面 社会保障

 

社会保障なんでも相談センター

新型コロナウイルスの特別定額給付金とは

社会保険労務士 園部喜美春

 

新型コロナウイルスに関する個人向けの給付金として、1人当たり一律10万円の「特別定額給付金」が決まりました。申請から給付まで市区町村が窓口となり、DVによる別居は特別申請で対応します。

 

8〜9面 販売支援

 

コミュニケーション・ツール

「平成30年国民健康・栄養調査」

からライフプランニング

 

「健康増進」が生命保険商品・サービスを提供する上でのキーワードになっていますが、運動習慣のある人の割合はこの10年間で大きな変化が見られず、アプローチ段階での啓発が望まれます。

 

11面 商品改定(損保)

 

あいおいニッセイ同和損保

「新型コロナウイルス感染症の影響拡大に伴う商品改定」

 

新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、感染症被害を対象とする商品について補償範囲を拡大した。対象契約は、今年2月1日時点の保有契約などで、この感染症を補償する特約を追加保険料無しで自動セットするなどを実施した。

 

12面 人事制度

 

太陽生命

週3日、週4日勤務制度

 

太陽生命は4月、内務員などを対象に新たな両立支援施策を導入。①週3日、週4日勤務制度②通院休暇の適用拡大③男性育児休業の1カ月取得。「収入の減少を抑制しつつ、介護やガン治療をしながらも働き続けることのできる職場環境を構築した」という。

 

15面 採用・育成

 

組織長への道

事例研究  自己主張貫き組織を統一

 

菅谷和子さんは組織長歴2年。この間、仕事に関する豊富な知識と計算力を駆使した的確な指導で育成率100%を実現してきた。一方で、自分の信念に基づいて正々堂々と組織の経営にあたってきた。今やその部下はもちろん、上司からも絶大な信頼を寄せられている。

 

[トピック]

 

新型コロナ感染症対策支援に貢献

日本生命は、国際金融公社(IFC)が発行するソーシャルボンドに2億豪ドル((約131億円)を投資した。

同債券は、IFCが新型コロナウイルス感染症の急速な拡大に伴い、発展途上国の民間企業への緊急支援を発表した3月3日以降、単独の機関投資家向けに発行する国内初のソーシャルボンド。

調達した資金は、新型コロナの影響を受けた国を含む発展途上国で、必要なサービスを受けられない人々を受益者とするプロジェクトに充てられる。

また、IFCは新型コロナの拡大による景気低迷の影響を受ける民間企業、その従業員を支えるため、80億米ドルの新型コロナ関連の融資枠を設定した。

 

保有契約件数が60万件を突破

SBI日本少額短期保険は4月27日、保有契約件数が3月末時点で60万件を突破した、と発表。

2008年に少額短期保険業者として登録以降、賃貸住宅向け総合保険(現在の商品名「みんなの部屋保険G3」)を中心に販路を広げてきた。

さらに、2016年にSBIグループの一員となり、バイク・自転車向け車両保険を新たにダイレクトで販売。

なお、保有契約40万件から50万件は2012年度から約4年かかったが、50万件から60万件は2016年度から約3年間で達成した。

「グループ各社による、サービスの提供やクロスセルなどのシナジー効果によって、成長は一段と加速した。SBIグループが掲げるネットとリアルを融合したハイブリッド戦略を推進する」という。

 

異業種からの参入相次ぐ

◇保険クリニック(アイリックコーポレーション225店舗)

アピタ名古屋南店=4月3日。愛知県では12店目。募集代理店は宝交通。名古屋市南区豊田4-9-47 アピタ名古屋南1階。10時~20時。

中野ブロードウェイ店=4月1日。東京都では30店目。サンユーライフサービス。中野区中野5-52ー15 中野ブロードウェイ1階。10時30分~19時30分。

イオンモール水戸内原店=3月28日。茨城県では6店目。トヨタインシュアランスサービス。水戸市内原2-1 イオンモール水戸内原3階。10時~21時。

QLuRi川越店=3月27日。埼玉県では15店目。プラス。川越市大字小室385ー1 2階 TSUTAYAQLuRi川越店内。10時~18時。

ビバモール東松山店=3月25日。埼玉県では14店目。浜屋。東松山市神明町2-11ー6 ビバモール東松山店2階。10時~19時。

昭島モリタウン店=3月20日。東京都では29店目。トヨタ部品茨城共販。昭島市田中町562-1 昭島モリタウン東館2階。10時~21時。

越谷レイクタウンKaze店=3月6日。埼玉県では13店目。越谷市レイクタウン4-2-2 イオンレイクタウンKaze3階。10時~21時。

 

 

制作 株式会社保険社 保険情報・ネットソリューション・チーム

住所 〒166-0003 東京都杉並区高円寺南4-2-8 サンユースビル2 4階

電話 03-3317-0391

 

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