少額短期保険

■少額短期保険 2008年度決算分析

まだまだ発展途上の少額短期保険会社

アカラックス株式会社 代表取締役 坂本 嘉輝氏

 

厄介で困難な決算情報収集


通常、読者の関心は保険会社、特に本紙の場合は生命保険会社だと思いますが、数年前から保険業法に従う保険事業者として「少額短期保険業者」というのが登場しています。今日はこれについてちょっとみてみましょう。

少額短期保険業者はいわゆる無認可共済を整理するための保険業法の改正に伴い、2006年10月の日本震災パートナーズを第一号として、現在までに66社が事業の登録を受け、1社はすでに廃業して現在65社が営業しています。

少額短期保険業者の登録は金融庁ではなく財務局で行なうのですが、この65社のうち関東財務局が50社、うち主たる事務所が東京都にあるものが37社となっています(関東以外の財務局については、近畿5社・東北3社・中国2社・東海1社・北海道1社と、あと福岡財務支局2社・沖縄総合事務所1社となっています)。

少額短期保険業者も保険業法にしたがって毎年3月末に決算し、7月末までにディスクロージャー資料を作成しています。各社のホームページから決算のP/L・B/Sあるいはディスクロージャー資料をまとめてみてみました。

とは言え、生命保険会社と違って少額短期保険業者の場合、全社がホームページにこれらの資料を公開しているというわけではなく、さらにはホームページ自体みつからない少額短期保険業者もあります。

少額短期保険業者にも少額短期保険協会というものがありますが、これも全社が加入しているわけではありません(上記65社のうち53社が会員となっているので、12社はこの協会に加わっていないということになります)。

この協会のホームページの会員一覧のページから、各社のホームページへのリンクが張ってある場合もありますが、リンクされていない会員もあります。

今のところ、2009年3月期の決算の数字をホームページから取れるのは41社です。

その内容も非常にバラエティに富んでいて、ほとんどの会社は少なくともB/SとP/Lくらいは開示しているのですが、中にはB/Sだけという会社もあります。またディスクロージャー資料自体、ホームページから取れる所も20社あります。多くの会社の資料は印刷することができるのですが、中にはご丁寧にpDFファイルを印刷不可にしている所もあり、印刷するのにちょっと一手間余分にかかる、厄介な会社もありました。

65社中41社というのは少ないようですが、登録が終わっても(2009年3月末までに)保険事業を開始していなければ、必ずしも保険業法による決算の開示は必要ないということになっているようなので(これは免許保険会社でも同様のようです)、たとえば去年の暮れ以降登録した会社ではそのために決算発表をしていないのかも知れません。

中身をじっくり見る段階ではない

保険業法に基づく決算も第一号の日本震災パートナーズは3期目の決算となりますが、多くの会社は少額短期保険業者としては1回目の決算となります。

昨年3月の決算まではとりあえず決算して書類を出すというのが主な目標だったようですが、今回からは決算報告の内容・様式も直前に大幅に変更になり、いよいよ監督当局も決算の内容を見始めたと思われます。

これまでの2007年3月期、2008年3月期の決算では、収入保険料がマイナスになる(損保方式で正味収入保険料を表示すると、元受保険料収入より支払再保険料が大きいと、差引き正味保険料収入がマイナスになってしまう)とか、期末責任準備金がマイナスになる(これも元受けの責任準備金より出再分の責任準備金控除分の方が大きいとマイナスになるということなのですが、これについては本当にマイナスにしてしまってよいのだろうかと思います)とか、あるいは保険金が収益項目になっているとか、なかなか興味深い決算が見られたのですが、今期からはP/L・B/Sも生保方式になり、大分わかりやすくなりました。

生命保険会社であれば、金融庁の指導の下、生命保険協会が決算発表の統一的なルールを作ったりして横並びの比較しやすい資料ができあがるのですが、少額短期保険業者の場合はそういうわけにはいきません。

少額短期保険協会はあるにはあるのですが、上記のように必ずしも全社が参加しているわけではなく、また会員各社に対しても協会が指導的立場にあるわけでもなく、何より協会自体が発足後間もないこともあり、資金的にも人員的にもまだ脆弱ですから、生命保険協会のような機能を少額短期保険協会に期待するのは当面難しいのではないでしょうか。

生命保険協会でも、生保会社がしっかり儲けて生保協会に資金も出し、人も出して体制作りをしてるので、協会もちゃんとした仕事をすることができ、それによって会員各社も同じことを各社それぞれでやらなくてもよい分、効率化が図れるという具合になっています。

少短では逆に、各社がまだまだ経営基盤が確立されていない(要するに十分儲かっていない)ため、協会にそんなに金や人を出すことができず、その結果、協会でも会員に対するサービスにも限界があり、かといって会費も高くすることができない、人も揃えられないというサイクルになっているようです。

いずれにしてもまだ決算の中味をしっかり見るという段階ではなく、もっと簡単に大まかに見る必要がありそうです。

少短決算の視点
•儲かっているのか、赤字なのか
•その赤字は資本金でカバーできるのか、増資の必要が差し迫っているのか
•収入(保険料収入)と支出(事業費)のバランスは取れているのか。どのような改善が見込まれるか
というところでしょう。

赤字会社 資本金調達の目処がポイント


保険事業はそれほど大儲けできる事業ではないし、すぐに儲かるようにできる事業でもありません。他の事業に比べれば時間がかかります。

特に営業開始の最初何年間かは赤字の覚悟が必要です。また保険業法にしたがって事業をしようとすると、思っていた以上に経費がかかり、想定をはるかに下回る新契約しか獲得できません。

赤字決算であった場合、うまく軌道に乗るまで今の資本金で足りるのか。足りない場合は追加の資本金の目処は立っているのか。このあたりが今回の決算の注目ポイントだったようです。

添付の表(PDFにて閲覧可能 印刷はできません)は決算の主な項目をまとめたものです。
収入保険料の規模と事業費の規模・総資産の規模を見くらべてみて下さい。また「資本金+資本準備金」と「純資産」を見くらべれば、調達した資本がすでにどれだけ使われてしまったのかがわかります。

「純資産」と「当期純利益」を比べると、資本にどれ位の余裕があるか(ないか)わかります。

多くの会社は新しい決算報告の様式にしたがって決算発表していますが、中には去年までの様式にしたがっているもの、あるいは少額短期保険会社になる前の時代の決算の様式をそのまま使っていると思われるものもあり、必ずしも統一が取れているわけではありません。

また新しい様式にしたがって開示していても、小項目までの開示がなされていないため「保険金など」が取れずに、その上のレベルの集計項目「保険金など支払金」までしかわからない会社もあります。

多くの会社は赤字決算です。黒字になっている会社は、家財保険を販売し、特定保険業者から少額短期保険業者へ移行した、あるいは契約を移管した会社で、保有契約をしっかり保有している会社が多いようです。

このような会社の場合、少額短期保険業者になる前の契約あるいは移管した契約が利益をかさ上げしているかも知れないので、それがどれ位長続きするのか見守る必要があります。

この表には表示されていませんが、家財保険の少額短期保険会社には、元受保険料の収入のかなりの部分、あるいはほとんどの部分を再保険料として支払っている会社が多くあります。

このような場合、再保険コストがどれ位になるのか、もう少し(何年か)時間をかけて見る必要があります(再保険により初年度は利益がかさ上げされ、その分翌年度以降利益が圧迫されるかも知れません)。

・少額短期保険業者の名前などは、
http://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/shougaku.html
を見て下さい。
・少額短期保険協会のホームページは
http://www.shougakutanki.jp/
・会員一覧は
http://www.shougakutanki.jp/about/membership.html
を見て下さい。

ここから運が良ければリンクをたどって少額短期保険業者のホームページに行くことができます。リンクが張ってない場合、あるいは少額短期保険協会に加入していない会社の場合は、会社名で検索するしかありません。無事ホームページにたどりついた場合でも、決算の資料がどこにあるのか見つけるのもかなり手間がかかるかもしれません。

 

『保険情報』 2009年9月11日号掲載

アカラックスのホームページ http://www.acalax.jp/
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