拠点経営Q&A
Q07 新しいスキルを与えたい
行動科学に学ぶ営業スキル
主流の知識教育から脱皮
拠点長就任1年目です。今年度から都心にある拠点を担当しています。営業職員活動のほとんどが職域基盤中心です。保険についての知識レベルもかなり高い顧客層が多くいます。職員は保険知識はもちろんのこと、税金や金融商品まで幅広い分野で、普段からの勉強が欠かせません。
職域という限られた時間の中での活動ですので、職員の活動に少しでも役立つような、何か新しいスキルを付与してやりたいと思っています。でも、なかなか良いものが見つかりません。一方、会社の教育システムは、過去からの伝統的で古臭いものや、理念的なものの繰り返しにすぎません。従来にない新しい観点から取り組むことができ、そして、職員の営業スキルのアップにつながる教育について、ご指導をお願いします。
(大都市拠点32歳の男性拠点長)
体系的なノウハウが不備
拠点長1年目の方からのご相談です。本社のシステム部門、業務部門、支社を経て、今年度から都心支社の拠点長に就任しました。
拠点長に就任してわずか半年余ですが、仕事への真摯な取り組み姿勢は営業職員から絶大な信頼を受け、業績遂行、組織拡大もトップクラスの結果を出しています。支社の中でも新しい風を起こす存在となっています。
それでは新しい観点から、職員のスキルアップにすぐに役立つ教育のポイントについて説明していきます。
教育内容を区分する
保険会社の教育は、昔から試験対策を中心とした知識教育が主流となっています。しかし、今後の教育は「知識教育」と「スキル・ノウハウ」を分けて考える必要があります。
[知識教育]
●商品知識
●社内規定
●税務・金融知識
●社会・経済情勢
[スキル・ノウハウ]
○販売話法
○販売技術
○顧客心理
そして今後は、営業職員が営業の現場で本当に必要としているにもかかわらず、従来ほとんど教育する機会がなかった、「スキルアップ」「ノウハウ習得」に向けた教育を充実させていかねばなりません。
スキルアップに役立つ教育とは……
「スキルアップ」「ノウハウ習得」に向けた教育が行われていなかったため、個々の職員は自己流や手探りで、失敗を繰り返しながら獲得してきました。本来でしたら保険会社は、職員の獲得したスキルやノウハウを体系的に整理すべきですが、残念ながらそのような整理をしている会社はまったくありません。
今回、新しい観点ということですので、人間の行動科学面からみた「説得のテクニック」を紹介します。
1)固定的行動パターンを知る
七面鳥に天敵であるイタチのぬいぐるみを与えると、くちばしで激しく攻撃します。
次に、ぬいぐるみの中にレコーダーをセットして、ひな鳥の声を流すと、急にぬいぐるみの世話を始めます。また、声を止めるとまた攻撃を仕掛けます。このように動物は、音声や色といった「特殊かつ一定の刺激」に対して、規則的で機械的な行動パターンを示します。人間も同じように、固定的な行動パターンを持っています。
2)人間の自動的な行動の例
「人に何か頼み事をするときには理由を添えたほうが成功しやすくなる」。人間行動の原理のひとつに、このようなケースがあります。
(事例)コピーの割り込みの実験
「5枚だけ取らせて」60%成功
「緊急で急いでいるので5枚だけ取らせて」94%成功
このように、「お願い + 理由」の効果は、完璧に近い結果となっています。
3)顧客の説得に活かす
■コントラストの原理
2番目に提示されるものが、最初に提示されたものとかなり異なっている場合、人は実際以上に異なっていると考えてしまう傾向があります。
この原理を活用することにより、最初に提示するものの価格次第で、同じ商品の価格を高くも安くも感じさせることができます。
したがって、セールスの場合は、高額なものを先に見せた方がずっとうまくいくのです。
■返報性(お返し)のルール
人は他人から何らかの恩恵を受けた場合、似たような形でそのお返しをしなくてはならない気持ちになります。このルールには、大きな威力があります。
相手に借りがあるという気持ちがあるために、まず断るような要請でさえ受け入れてしまうのです。
すなわち、返報性のルールのために、知らぬ間に恩義を感じてしまうのです。そして、恩義を受けている状態というのは、人間に不快感や負担感を生じさせるものであるため、お返しをして、それを解消したいと思うのです。
ですから、顧客へのギフト等は、たとえ小さくても効果を持っているのです。
■権威のある者(専門家)の意見
人は権威のある者や専門家の意見には、従おうとする傾向があります。
しかし、それだけでは不十分で、相手から信頼・評価を受けるためにはテクニックが必要です。
(レストランの例)
最初に注文された料理よりも少しだけ値段の安い料理を勧める。
自分の利益だけを考えているのでなく、お客さまのことを心から思っている、信頼できる情報の提供者、との評価を得られます。
■ランチョン・テクニック
人間の行動と食べ物との結びつきも大きなものがあります。たとえば、政治資金を調達するために米国のホワイトハウスで行われる食事会では、協力を求めるスピーチやアピールは、食事の前でなく、食事中か食事の後に行われます。食事中に関わりのあった人や物をより好きになるのです。食事中に出された政治的意見について、食事後には無意識のうちにより好意的に変わっているのです。ですから、この効果を知った上で顧客との会食をして、食事中や食事後にビジネスの話をすれば、相手は受け入れられやすくなっています。
4)職員全体での振り返り、気づき
拠点長として以上のポイントを教えて、職員に理解・実践させることができたら、従来と同じだけの活動量でも、成約に結びつく確率は格段に上がります。職員の成績アップという大きな効果が必ず現れてきます。職員に必ず教えてあげて下さい。
職員は、このノウハウを学ぶことにより、今まで自分自身が実践してきた行動や話法について、いろいろ気づくことがあります。
今までに何気なくしていた行動や話法について、先のポイントを適用し、どこが良い点でどこが悪い点なのか、きちんと把握させて下さい。
そして、良い点についてはさらに磨き、悪い点はすぐに修正・改善をすることを指導して下さい。また、職員各自の気づきを大事にして、それに基づく改善ポイントを指導して下さい。
職員全体の前で、ロープレを行い、職員自身が、今までしてきた説得話法について披露させましょう。
「そこはこう変えたらよいのでは……」
「そこはこのようにもっていけばよいのでは……」
職員全体で意見を交換しながら、職員同士で工夫を考えさせることも、スキルアップに非常に効果的となります。
(マネジメント経営研究所 芥藤 龍)




