マネジメント

拠点経営Q&A

 

Q05 苦情処理が悪くお客さまが激怒、どう対応? 

 

当事者は本社、支社なのに……日常業務にも影響がでてきた


拠点長4年目、首都圏の県庁所在地で在籍20名の拠点を担当し、支社でも上位の業績で推移しています。ところが、先日、10年以上取引のある企業経営者から苦情の申し出がありました。営業職員が新契約を勧めて、内容を了解し、加入の承諾、申込みも完了。社医の診査を受け、何も悪いところがないことを確認し、成立を待つだけの状況でした。

突然、本社から断りの連絡が入りました。本社が具体的な理由を開示しないで断ったために問題化し、苦情となったものです。契約者には、3億円以上の既契約があり、過去に一度もそのようなことはありませんでした。診査上の問題も無いと聞いていましたので、拠点では手の打ちようがありません。

その後、支社の対応も悪かったために大きな問題となってしまい、先方は「弁護士を立てて争う」と最悪の状況です。拠点長としては、できる限りの対応をしたつもりです。でも、問題の解決には至らず、今回の騒動により、仕事の半分以上がそれに割かれ、拠点経営面にも大きな影響が出ています。拠点長として今後どのように苦情対応へ取り組めばよいか、対処のポイントを教えて下さい。                   (首都圏近郊拠点担当、男性拠点長35歳)

 

CSの「C」はカンパニー? 当事者能力に欠ける支社

 

この契約者は売上げ20億円以上の企業オーナーで、企業の支払保険料は年間1300万円。毎年、何らかの形でおつき合いをお願いしている超親密企業です。

問題となった点は、会社側が引き受け不可の理由を一切開示しないことでした。担当の営業職員も拠点長も、会社側から開示されなければ、「初期対応」はできるはずがありません。

支社から一度だけ説明はありましたが、明確な断り理由が説明できず、かえって相手を怒らせ、火に油を注いだ形になったようです。その後も、契約者が支社へ出向いたものの、きちんとした事情説明をしないまま時間が経過してしまい、大問題となったようです。

一番の問題点は、支社サイドに当事者能力が欠けていたことです。責任者である支社長すら一度も表に出ずに、契約者の母と親しい元営業職員に、「何とかして欲しい」と仲介を依頼する始末でした。

契約者は弁護士を通じ、事情説明を会社に申し入れました。今後もきちんとした対応が図られない場合、提訴の意向と聞いています。
この保険会社は大手の一角ですが、この会社は、「CS」(顧客満足度)のCを「Consumer」ではなく、「Company」と勘違いしているのではないかと考えてしまいます。

今回のケースは、生命保険会社の「選択権乱用」に原因があります。事前にも事後にも、説明義務が履行されないということは、顧客の権利保護をいっさい考えておらず、苦情になることは避けられません。


その意味では、生保会社の選択権は、法的に整理されたほうがよい時期にきていることは間違いないでしょう。


また、苦情を申し出た顧客への対応を適切にすれば、会社や商品、営業職員への信頼度はより大きくなることを肝に銘じるべきです。日々、生じる苦情解決のポイントについて説明していきましょう。

 

ポイント1 苦情の定義

 

JIS規格で決められている苦情の定義は次のとおりです。
「製品または付帯サービスに関連するお客さまの不満足の表明。苦情には、製品または付帯サービスに対するもののほか、これらの提供に関連する組織の活動、または活動の結果によってもたらされるお客さまの不満足を含む」
かなり広範囲に、あらゆる面からの苦情申し出が考えられます。

 

ポイント2 苦情の分類と対応の基本

 

苦情はその内容により3つに分類することができます。
1)当方に非あり
苦情の発生につき、当方側に責任があるケース。
1 応対不適切─顧客への応対に不適切な言動があった場合。商品・サービスの説明不足や、応対の配慮不足など。
2 事務不適切─事務ミスや商品・サービスに関する職員の知識不足や事務水準に対する苦情。
2)批判・提言
当方に非はないが、不当・理不尽とはいえない批判・提言等。
3)当方に非なし
苦情の発生につき、当方側に責任がないケース。
また、苦情といっても一律な対応をするのではなく、これらの分類に基づいた対応を心がけなければなりません。
◇当方に非ありの場合は、陳謝し、善後策に取り組むことが必要です。
◇批判・提言の場合は、丁寧にお伺いし、意向に沿えるよう会社に提案してみます。
◇当方に非なしの場合は、ご意見をお伺いし、申し出者の真の意図を把握する必要があります。

迅速に初期対応し事実関係を確認


ポイント3 苦情対応の実践

 

1)苦情対応こそ拠点長の真価が問われる
拠点長として絶対にやってはいけないことは、営業職員任せにしたり、営業職員を盾にして、わが身を安全なところに置くことです。人間としても最低です。
逃げ回っていたら、職員からの信頼は確実にゼロになり、それ以後の拠点運営は難しくなります。火の粉がかかるのは当たり前と、腹をくくり取り組んで下さい。
2)具体的取り組み法
◆迅速な初期対応
まず、顔を出す。遅くなると「重苦情」になる懸念がありますので、早急に申し出者のところに出向きお詫びする(ただし、事実関係が判明するまで、責任の有無については明言してはいけない)。お詫びも「大変ご迷惑をおかけしています」という程度。
◆経過・事実関係の確認
その後、事実関係、経過を確認する。とにかく、相手の話をひと通り言わせること。途中で遮らない。
注意すべきポイントは、申し出者から、最初に説明を受けたものは要点を整理して会社側に報告。会社側には細かく説明し、申し出者から同じ事情を二度聞くようなことは絶対にしてはいけない(同じ事を言わすとそれだけで、連携がきちんとできていないと思われる)。
◆申し出者の意見と担当者の意見を検証する
事実関係を徹底的に確認すると同時に、申し出者の言っていることと、担当者の言っていることをすり合わせる。また、申し出者が改善を希望する一握りの顧客か、クレーマーかも把握する。担当者の人間性も把握の上、判断、検証する。
◆相手の要望を把握  そして、最終的に申し出者がどういうことを望んでいるのか。申し出者のプライド、面子をつぶさないように把握する。
◆筋を通す
相手に迎合するだけでは解決には結びつかない。筋を通し、できることと、できないことをしっかりと説明する。筋を通さないと、逆に大事になるケースが多い。
また、顧客の重要性に応じ、しかるべき地位の人の説明や謝罪等の対応も必要である。
◆男気(女気)を持って
勇み足も困るが、場合によっては会社とのケンカも。
◆言動はくれぐれも注意する
注意点として、最近の顧客との会話は、必ず録音されていることを前提とした言動が必要。不注意な発言をしないよう細心の注意をする。

 

ポイント4 生保会社の責務

 

顧客保護のために、苦情に対し適切かつ迅速に対応するのは時代の流れで、行政のスタンスも、苦情対応における「透明性」「公平性」を強調しています。
その点からも、「選択権」をオープンな形に改めることが不可欠です。
また、脆弱な社内規定や事務ルールをかざした事務対応、顧客対応は改めるべきです。社内の事務ルールで、顧客志向とは反対の現象が目立ちます。
最後に、申し出者の権利の尊重は不可欠です。苦情は、経営改善に対する貴重なアドバイスであり、苦情対応は、経営の品質の保証に他ならないのですから……。

(マネジメント経営研究所 芥藤 龍)

 

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