
キャッシュフローの充実テーマに法人開拓
株式会社 SIP経営企画
代表取締役 江藤 恭太氏
社会情勢見据えたマーケット戦略
今年で設立6年目を迎えた同社は、中小企業が抱えている問題解決のため、「キャッシュフローの充実」をテーマにアプローチし、約400社以上を開拓してきた。
扱い保険会社は14社で、営業拠点は現在、名古屋本社と東京の首都圏本部の2ヵ所。カスタマーセンターを名古屋に置き、常時顧客からの問い合わせを受け付けている。
昨年11月の決算では、5期目の売上が2億7,000万円以上にも及び、順調に伸展している。では、具体的にどんな戦略を展開してきたのだろうか──。
1)資料「決算対策の絶対必要条件〜決定版〜」の送付
同社では、江藤さんの15年間に及ぶ法人開拓のキャリアを元に、約7,000社の経営者から収集した諸問題とその解決法をまとめたオリジナル冊子を作成している。
「決算対策の絶対必要条件〜決定版〜」(写真右下:生命保険の記載なし)と題したこの資料を、毎年3,000社の中小企業に送付し、関心のある経営者を掘り出している。
江藤さんは同社設立以前、10年間独立系コンサルティング会社の専務取締役と保険部門担当を兼務し、このアプローチ法を展開して成功したという経緯がある。
その経験を元に、先ず収益を上げている企業のリストを元に、「決算対策の資料を送付してもよろしいでしょうか?」という電話を掛ける。

そして、社長が電話口に直接出た企業のみに「この資料は無料ですが、その代わり資料を見てから感想や意見を伺いたいので、資料到着後にもう一度お電話してもよろしいですか?」と承諾を得て資料を郵送する。
次に、資料到着後に再度電話を掛け、社長の関心の度合いを推し量りながら、「その資料だけでは全てをお伝えすることができないので、お時間をいただけませんか?」と繋げて面談の約束を交わすのだ。
「このステップを踏むことで、社長との1時間程度の面談が可能となり、営業マンからコンサルタントに変身します」
昨今の中小企業を取り巻く社会環境は激変し、経営者にとって企業の経営安定を維持することが最重要課題となっている。
「節税対策よりも簿外に利益をキャッシュでストックしておくことが何より重要ですと、面談の最初にお伝えします」
つまり、決算対策イコール節税ではなく含み資産の形成が重要であり、それによって予測不可能なリスクにも対応できることをキャッシュフローを踏まえて解説する。
オーナー社長の事業承継時の自社株評価や、07年問題で多数の定年退職者への退職金支給等、中小企業は多様な問題をはらんでいる。それらの問題解決策としての「含み資産」を形成するために、生命保険は重要な手段になると伝える。なぜなら経費化可能な金融商品は生命保険しかないからだ。
とはいえ、中小企業の抱える問題解決以前に、保険加入してもらうことが同社の特徴だ。
「御社にとって、これだけは最低必要ですよ──と説明して契約していただきます。私は自社株評価を下げたり、含み資産形成の対策アドバイスはできますが、それだけで事業承継は終了するわけではありません。企業によっては将来的に分社化を考えたり、ホールディングカンパニーを目指す所もあるでしょう。そのような場合、私のブレーンから税理士や弁護士等の専門家を紹介します」
そういった意味では、他の代理店とは逆のプロセスで契約を挙げていることになる。一方で、成約に結びつかなくても面談によって収集した企業情報は、蓄積することによって同社の財産になる。
「企業によっては、契約のタイミングが問題になったり、既契約を解約することで損失になってしまう場合は、契約になりませんが、その情報を蓄積することによって、その後の活動の指針になります」
ちなみにオリジナル資料は、今まで2回リニューアルし、今年3月にはフルモデルチェンジするそうだ。
財産となる面談内容の報告書
2)全スタッフ完全歩合
同社では、事務スタッフも完全歩合制だ。
「一つの案件でも、全員で役割分担しながらチームプレーを行っているからです。レベルがそれぞれ異なるため、レベルに応じた役割分担をして、1つの成果に繋がればレベルに応じた配当をしています。どんな高レベルな営業マンでも、最初から最後まで一人で関わることはできませんから」
3)高レベル目標に指導を徹底
一方、同社の営業マンの目標は、「3年以内にMDRTのTOT会員になること」。
「私自身がMDRT会員に復帰したのを機に、MDRT会員基準の達成は数字的な目標設定するのに非常に分かりやすいと思ったからです。設立した年に入社した営業マン3名は、結果的に全員クリアできました」
◇◇
同社では以下のような指導法で、営業マンのスキルアップを図ってきた。
a、テレアポ重視の指導
先ず、テレアポのレクチャーを江藤さんからしっかり受ける。
法人対象の営業であるため、テレアポは何より重視される。そして実際、1日に何百件ものテレアポを体験させるのだ。
「自ら電話をして努力したから面談に繋がったと思わなければ、社長との面談の時間がいかに貴重なのかが分からないでしょう。さらに、電話しながら先方が抱えている問題も探り、それがその後の活動の意義付けとなり、アポ取りの辛さも解消できます」
つまり、努力して社長との面談にこぎ着けたと思うからこそ、「この時間を大切にしなくては」或いは、「折角のチャンスを十分に活かそう」という気持ちになる。
b、報告書の提出
社長との面談内容を、口語体で一言一句全て報告書に記し、江藤さんに送信する。
それによって、「こんな会話が交わされたなら、次回の面談ではここがポイントになるからこんな資料を作成して持参しなさい」とアドバイスする。
営業パーソンが新人のうちは、報告書の内容によって江藤さんの同行もある。
「報告書を記すことで、どのようなプロセスを経て契約になったのかが明確になり、契約後のメンテナンスが適切に行えるというメリットもあります。また、仮に成約にならなくても、その報告書の内容は今後の活動の財産になり、自分のスキルアップにも役立ちます」
富裕層開拓にチャレンジ 好評のWEB相談
同社の今後の目標は、以下の2点。
1つは、2007年度の売上目標を3億5,000万円とした。
もう1つは、富裕層に絞り込んだ個人マーケット開拓だ。具体的には、中学受験生の親たちが情報交換しているサイトに、匿名で相談できる「WEB相談ページ」を開設した。
江藤さんがこのマーケットに注目したのは、自身の子どもの受験を通じてだった。
「子どもが私立中学を受験する親の年収は大体1,000万円以上であり、親の年齢は40代前半が多い。そのような年代の親たちは、保険のコンサルティングという名目で、営業マンによる推測のライフプランを元に保険に加入しています。
しかも、彼らは今後10年間、子どもの学費総額を明確に分かっています。従って、保険の見直しが必要な人たちで、首都圏だけで5万5,000世帯あります」
親は子どもに財産を残すことより、立派に一人だちさせてやることを考えている。そのためには教育が不可欠で、その教育環境を守ることが親の責務だと言う。
「仮に親に何が起っても、それによって子どもの将来に影響を及ぼしたくないと思っています。もし、生活資金の供給源が断たれたら、それを補填できるのは生命保険です。そのようなお客さまを守るのも私の役目だと思っています」
昨年の11月からスタートしたサイトだが、開設1ヵ月半に100以上のアクセスがあったそうだ。
「これは今後の個人マーケットの土壌作りを目的としているので、今すぐ契約にならなくてもいいと思っています」
以上のような同社の新たな方向性には、多大な可能性と光明が見えるようだ。
(本紙 樋口利子)
- えとう・きょうた 1989年ソニー生命名古屋支社に入社し、LPとして活躍。1992年独立系コンサルティング会社を経て、2002年SIP経営企画を設立。1990年よりMDRT会員は通算10回(そのうち7回TOT)。54年東京生まれ。趣味は、バレエ、オペラ、クラシック鑑賞。おじさんバンド。




