退職金セミナー切り口に業績アップ
株式会社 T・F・K
代表取締役 黒川 哲美
迫る適年廃止新制度導入を促す
大学卒業後からメーカーや流通業の機関代理店等に所属し、ずっと保険業界に身を置いてきた黒川さん。大手石油ディーラーの子会社である生命保険募集代理店の代表を4年半務めた後に、生保の営業権を譲渡され2004年に独立。「有限会社T・F・K」を設立した。
その1年後、同じ子会社の損保部門を担当していた江川剛さんが「株式会社E保険プランニング」を立ち上げて、T・F・Kのグループ会社に加わった。
2006年には株式会社に登録変更したT・F・Kは現在、営業スタッフ4名、事務スタッフを含め計10名が所属し、生損保合わせて23社の商品を扱っている。
業績に関しては、06年度は5億円だった売上が今年度は倍増する見込だ。その要因を黒川さんは次のように言う。
「退職金ビジネスに絞り込み、費用をかけたセミナーを開催したことが新規顧客の拡大に繋がったからだと思います」
周知のように、適格退職年金は2012年に廃止となる。それを踏まえ、新制度への移行が迫っているにも拘らず、まだ多くの中小企業の経営者は取り組んでいない。
今後、団塊世代の大量退職者に備えて多くの退職金が必要となり、退職金倒産が懸念される企業もあるため、早急の対策が必要だとセミナーを通じて警告を発している。
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では、どうして黒川さんは退職金ビジネスに着目したのだろうか──。それは黒川さんがそれまで経験してきたことがベースとなっている。
「メーカー時代に子会社だけの連合の厚生年金基金の立ち上げにも関与したことや、流通業時代に経営者が適格年金に対して全く危機感を持っていないことに気付いていたので、20代の頃から退職金問題に関心を持っていました。だから、いずれ退職金規程の見直しが必要になる時代が来ると思っていました」
こうして、同社は独立直後から退職金セミナーを開始し、中小企業の経営者の参加を呼び掛けた。セミナーへの参加者は、入手した企業データを元にコストを掛けた手作りDMを発送し集客した。
通常、手数料ビジネスに携わっている営業マンの多くは事業にコストを掛けない傾向にあるが、敢えて黒川さんはコストを掛けてDMを作成したと言う。
「私はずっとメーカーに勤務していたことで、何か事業を始める時にはそれなりのコストを掛けることを意識していました。会場も当初はセミナー会場を借りて開催していましたが、コストを掛けてシティホテルに変えたことで参加者の質と意識が高くなりました」
とはいえ、セミナーを開始した当初の1年は、失敗を繰り返し試行錯誤の連続だったと言う。しかしここ3年は軌道に乗り、月2〜3回セミナーを開催。これまで全国の政令都市を中心に68回実施してきた。
「セミナーでは退職金規程を軸に、退職金問題のスペシャリストである社労士が講師を務め、その後に私たちが個々の経営者に提案するスタイルで役割分担を明確にしています。これまでセミナーを開催して分かったことは、経営者は自社の退職金の問題に気付いて、どういう対処方法が良いか知りたい。しかし保険屋は保険だけを売りたい、社労士は退職金規程だけを作りたい、保険会社は適格年金を売った後のメンテナンスはしないが401kはまた売りたいと、売り手と買い手がずれていました」
社労士と役割分担幅広いビジネスに派生
では、同社が開催している「新・退職金制度改革セミナー」の具体的な内容と、その後のコンサルティングの流れを紹介しよう。
1)セミナー参加への呼び掛け
「退職金のことを人事部や総務部に任せっきりで手を付けていない経営者や、401kの説明を受けたがよく分からない経営者に、将来に亘って経営上ダメージを受ける可能性があることを当社のサイト『適格年金救済サイト』やDMで訴えて参加を募っています。また紹介からの参加者もいます」
2)社労士による講演
運用利回り低下による適格年金の積立不足、退職金規程のチェックポイント、積立不足の効果的解消法、制度移行の留意点──等を説明。
3)退職金制度のコンサルティング
セミナー後に、コンサルティングを希望する企業を訪問し、以下の流れで実践していく。
◎現行退職金制度の分析&診断(制度導入の経緯や退職金額、今後どうしたいのか、過去の支払実績等をヒアリング)
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◎適格年金の問題点と将来予測(退職給付債務額、積立不足額、適格年金の負担の将来予測等をデータ分析しレポート作成)
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◎新退職金制度の検討と提案(どんなファンドで解決するのかの要望に沿い、中退共と生保あるいは、401kと生保等の組み合わせを提案)
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◎就業規則や退職金規程を新しく作成(適格年金の解約や移行制度の導入、退職金制度の廃止や減額、その他の福利厚生制度の導入等)
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◎新制度の社内説明会の実施と労使合意の形成(従業員へのプレゼン資料の作成や説明会の実施、既得権の保護等)
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◎新制度の導入と新規程の届出(新制度の円滑なスタート、導入後のPR、就業規則の変更等)
以上の流れで、ここ数年は月に平均2〜3社が新制度導入を実施し、これまで100社弱と契約を交わしたと言う。
ちなみに、新制度規定の導入に当たり、1社あたり基本料金がプラス20万円、従業員1名につき5000〜1万円のコンサルティングフィーを同社が受け取る。
「導入後で最も大切なことは、次年度からメンテナンスを継続していくことです。年に1度、従業員一人ひとりにレポートを作成して積立金額を公開します。現在、そのための最新システムを開発中です」
新規定導入後の継続的なメンテナンスによる最大のメリットは、経営者や従業員と理想的な信頼関係が構築されることで経営者個人の保障、役員退職金や相続対策、損保契約にも繋がることだ。
実際、これまで退職金ビジネスにチャレンジしてきた代理店も多かったが、導入まで長期的なコンサルティングや活動が要求されるために諦めてしまった代理店が多数あった。
それに対して、退職金のスペシャリストである社労士を社外スタッフとして加え、根気強いコンサルティングが得意な黒川さんだからこそ、退職金ビジネスから幅広いビジネスに派生させていくことに成功したと言える。
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一方、グループ会社であるE保険プランニングは、損保代理店のM&AとFCをメーンに行い、新しいビジネスモデルとして注目を浴びている。
これまで90社以上のM&Aを成功させてきた同社は、昨年12月に札幌支店を開設し4月から実質的に稼働している。
代表取締役である江川さんは、「経営難の損保代理店を救済するために吸収合併を行い、手数料を保護した上で彼らのマーケットを十分活かせるようにしています。今年度中に首都圏には3店舗開設するのが目標です」と言う。
最後に黒川さんは、「当社の今後の売上目標は、年間30億円です。損保は直営及びFCで20億円を早期に実現し、生保は収保ベースで10億円を目指したい」と結んだ。
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くろかわ・てつみ大手メーカーの保険部門に入社後、運送業や石油系スーパーディーラーで保険事業に関わる。その後、大手石油ディーラーの子会社である生命保険募集代理店「アローファイナンシャルサービス」の代表を経て、2004年独立。「有限会社T.F.K」を設立。1999年よりMDRT会員(COT連続3回、TOT連続7回継続中)。66年横浜生まれ。趣味はスポーツ観戦。
ホームページ http://www.tekinen.jp/
(本紙 樋口利子)




