支社長初場所物語
第15話 お蔵入りにした支社運営ビデオ
本社の教育部から電話が架かってきました。森さんの支社運営が軌道にのってきた頃からちょくちょく顔を出していた教育部の若手職員です。
「支社長、支社の運営についてビデオを作製したいのですが取材をさせてもらえませんか?」
「全国に教材として配布したいのです」
「営業職員の生産性、事務効率の向上」
「支社での教育体制」
「営業基盤への取組み」
「支社長の考え方が反映されていると思うのです」
森さんは決して悪い気はしませんでしたが、果たして自分のやってきたことが会社の方針に合致したことであるのかは疑問でした。
シナリオを見たときに森さんが出した注文は、できるだけ拠点長、営業職員、事務スタッフを多く取り上げてくれ、ということでした。しかし支社長自身のインタビューも避けることはできません。
拠点長、営業職員も協力してくれたのですが、撮影が進むにつれて森さんには違和感が生じてきました。
<これは何のための教材なのか?> 全国には幾多のベテラン支社長がいます。今さら、新人支社長がたまたま成功した例を参考にはしないのではないか?
森さんは「PRビデオみたいに作っても意味は無い」と担当者に率直に話をしました。完成したビデオは「良くできた作品」でしたが「教材」としては森さんの予想通りお蔵入りになってしまいました。
作品コピー20本が届いたのは、森さんが2場所目の支社で更に効率的な支社作りを始めていた時でした。



