連載

 

支社長初場所物語

第13話 テクニックでは変わらない支社経営


 年経って前年実績を超える数字が出てきたことは、森さんにとって嬉しいことではありましたが、初年度の数字を落として翌年度に数字を挙げるというのはベテランの支社長がよく遣うテクニックです。口の悪い連中は陰口をたたいたりしているのが聞こえてきます。
 
 森さんは敢えてそのことにコメントしませんでした。彼の頭の中ではテクニックでは支社はいつまで経っても変わらない。増えて減っての繰り返し、という思いがあったのです。この支社だけは変革進化できる、その思いだけは忘れないでやっていこう、と心を新たに取り組んでいました。

 

 森さんが新入社員だった頃可愛がってくれた2人の先輩機関長がいました。この2人はその後支社長職を5、6場所勤めるほどの名物支社長になられたのですが、2人の性格はまったく違っていました。

 

 1人は清濁併せ呑むタイプでしたが、仕事の成果は基盤から、という哲学を常に実践されていました。もう1人は支社の誰にでも大きな声で挨拶をする、その人がいるだけで場が明るくなる、そういう支社長を続けられました。

 

 この2人から時々電話をもらいながら、自分を信じて仕事を進めることを教えられた森さんは、迷うことが無くなり、支社の一体感はさらに強まっていきました。

 

初場所の支社長として素人扱いされていたことなど、当の森さん以外は皆忘れてしまったようです。

 

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