連載

 

支社長初場所物語

第3話 支社のための、見せかけの数字なら不要


 森支社長の初出社の日は緊張のうちに過ぎていきました。朝一番でスタッフと顔をあわせ、同時に着任してきた拠点長と挨拶もそこそこに、彼は自分の拠点に出て行きます。始業の時間がくると事務の朝礼です。

 

「今日から皆さんと一緒に仕事をすることになりました。何も判りませんのでよろしくお願いします。自分の仕事を正しく確実にやってください」

 

という意味のことをしゃべりますが、みなの目線は〈今度はどんな支社長かしら……〉という感じです。


 感慨にふけるまもなく、用意された支社の車にのって16ある拠点に挨拶訪問です。最初の拠点では朝礼に間に合い、出勤していた全員と顔をあわせましたが、2つ目では出かけた人もいて、3つ目からは拠点長と事務員さんだけの挨拶もありました。


 ある拠点で拠点長がグラフを見ながら「支社長、この子は今月で辞めるのですが、成績出して辞めますので」といいます。

 

 森さんは思わず「そうですか、契約は続くのですか? いや拠点長のあなたの判断を尊重しますが、リーダーの査定に必要とかいろいろ事情はあるでしょうから」

 

「いや支社長、拠点の実働も減りますし、支社の実働もありますから……」

 

「支社の見かけの実働を心配されるなら、そんな実働は要りませんよ、継続しない契約もいりません」「本当ですか?」

 

「ええいいですよ」


 森さんは普通に会話をしていたつもりでしたが、この会話は森さんの支社運営の最初の舵取りになってしまいました。

 

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