支社長初場所物語
第2話 予想外の支社に赴任
内示の日がやってきました。森さんは予告どおり支社長を拝命しました。担当する支社は九州のM支社ではなく首都圏近郊の実働350名のX支社です。全く予想さえしない支社でした。
確かに初陣の支社長が行く支社でもありますが、森さんのように拠点長や支社営業スタッフとしての経験が少ない人が着任することはあまりない支社です。入社したときに配属された支社の近くにある、ということだけがイメージとして持てるくらいでした。
入社の時といっても20年以上前です。何より今までの準備が反故になってしまいます。
現職の引継ぎや挨拶回り、引越しの準備、などなど時間はあっという間に過ぎていきました。前任の支社長は同期入社のB君でしたので、引継ぎは形式的ではなく、ある程度本音を聞きながら進めることができました。
曰く─、
「なかなか大変な支社ですよ」
「何とかしようとがんばったつもりですが」
「お上がちょっとうるさくてね」
「森君なら大丈夫ですよ」
森さんが感じたことは、前任支社長が改革しようとしたことが果たせず、しかも言い訳にはできないが、社内圧力を跳ね返すことができなかった悔しさのようなものでした。
支社長というブランドよりも「覚悟」という言葉を強く感じた引継ぎになってしまいました。



