連載

 

支社長初場所物語

第1話 副社長の一言に翻弄されて


本社部門の経験が長い森さんが、副社長から「今度支社長になるよ、がんばってな、確定ではないが多分九州の方の支社だと思うよ」と内々に語られたのは3月の声を聞くころでした。

 

会社では初陣の支社長が行く支社というのがいくつかあります。森さんの所属する会社でも10支社くらいがその対象です。

 

自分が初めてで九州となれば該当する支社は2ヵ所でした。森さんは嬉しさとともに想定されるM支社のことに思いを馳せました。広い県なのに確か実働は少なかったな。結果、契約高も小さく、全国の支社順位でも下からラスト10にあるような支社だったな……。

 

最初の感動から落ち着いてくると、県庁所在地のほかに県の北に有力な企業城下町があったな、友人知人はいたかな、などと色んな発想が出てきました。

 

もちろん内示前ですが、家族にも「今度の異動で支社長みたいだよ、多分M支社だと思う」と話をしていました。家族も久しぶりに森さんのにこやかな顔を見たのではないでしょうか。

 

ところが、内示日の数日前に副社長に今の仕事の稟議書を持って行った際に「支社長にはなるけど場所が変わるかもしれない」といわれました。

 

ということは、いろいろと自分なりに構築したり、M支社の過去の数字を見たりしたことが無駄になるかもしれない。支社長になるのは嬉しいけれど、ここだと思っていたのが肩透かしを喰ったような、むずがゆいまま内示の日を迎えることになりました。

 

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