【よりよい医療を受けるために 特別レクチャーシリーズ 第3回】

 

さがさき理事長


突然病魔に襲われ、短期間のうちに適正な判断を下せる人は少ない。気持ちも動転しているし、急には情報も収集できない。嵯峨﨑理事長は、普段から「ヘルス・リテラシー」を高めておくことを提唱し、それは難しいことではなく、ちょっとした心構えのようなもので、保険の募集人がセールス活動の中で啓蒙するのが最適だという。


中間法人日本医療コーディネーター協会の嵯峨崎泰子理事長に医療とのかかわり方についてレクチャーをしてもらう。


耳障りのいいものを都合よく解釈

 

値段高ければ効く?

 

エビデンス(医学的な根拠)のないものが全てガン治療に無意味なわけではありません。その患者さんにとって、病気に立ち向かっていく気持ちを維持できるものであればいいわけです。ご本人がその効用を認め、信じている分にはいいでしょう。もちろん、経済的負担との兼ね合いがうまくついていればということですが。
ところが治療費が負担になっている患者さんというのは、その苦痛をポロポロと出してきます。それをいかに医療者の方がキャッチしていくのか。このサインは患者さんの叫びでもあるのですが、なかなか受け止めてもらえません。


特に、医師にそれを求めても「いいと思うのならやって(続けて)みたらいかがですか」といった反応がふつうです。この言葉の後には「もっとも、医学的には意味がないけれども……」と続くのですが、患者さんの意思を尊重し口にはしません。健康保険の範囲ですべてやり尽くしてしまっていればなおさらです。


自由診療というのは玉石混交で患者さんへのアプローチもさまざまです。患者さんサイドも自分にとって耳障りのいいもの、メリットがありそうなものを都合よく解釈してしまうので、例えば「治験段階」だといった重要な情報が抜けてしまうのです。


信じる力というのはすごく大事です。信じる気持ちがなければ病気は克服できないからです。ただ、自由診療・民間療法には価格の基準がある訳ではありません。


ですから料金の高いものの方が、効くのではないかと思いがちです。実際にコストを反映させた良心的な治療がある一方で、一歩間違えれば詐欺まがいの弱みにつけこむような例も少なくありません。

 

ビタミンに350万円

 

ごく最近の例なのですが、明らかに手術をした方がいい男性のガン患者さんがいらっしゃいました。手術をすると、生活上に機能的な弊害が出てしまう反面、完治もすれば仕事もできるという状況です。それでも悩んでいます。機能障害を引き換えにした手術に踏み切れないでいるのです。


ご自身の周りにも医師の知り合いが何人かいるらしく、いろいろと情報が入ってきます。その中で、手術をしない提案をした医師についていきます。その患者さんは、ビタミンを大量に投与する療法を選んだのですが、もちろん自由診療です。約3ヵ月で350万円を使いました。


他の医師は「そんな治った証拠もないようなものは止めるべきだ」と忠告もしたのですが、聞く耳を持ちません。


残念ながら効かないわけです。そうこうしているうちに、ガンもだんだん大きくなっていきます。
やっと摘出手術を受ける気になられたので段取りをつけることになりました。

 

強力な家族の意向

 

ところが、突然「その病院のある方角は風水がダメだから断ってくれ」と言い出したのです。風水を持ち出したのは奥さんでした。ここまでくると私どもとしては何も言えません。

 

日々悪くなっていくのは、本人がいちばんご存じなので、改めて手術を受ける決意をします。実績のある医師をご本人が指定してきたので、紹介状などを用意し、準備も整えたのですが、また「病院の方角が悪い」ということになりました。

 

このケースは、ガンに罹患した悲劇を、手術で克服しておけば最小限のダメージですんだにもかかわらず、自由診療の選択に失敗し、ご家族のこだわりに振り回された結果、心身ともにボロボロになってしまいました。

ピアカウンセラーを育てる

患者さんの本心
 
前述のケースが特異なわけではありません。日本では、治療の選択を患者さんでなくご家族で決めるケースが多いからです。そこで「あなたはどうしたいんですか」と患者さんの気持ちを引き出していくのも医療コーディネーターの仕事です。


また、同時にご家族に対して偏りのないフラットな情報を提供し、そのメリット・デメリットも含め、お伝えする一方、ご家族の心情的な部分を主治医に知らせ(事前に患者さんなどには了解を得ている)ていきます。医師も腑に落ちなかったものが納得できれば、ベストな治療法を検討してくれるからです。


ガンに限らず命に関わるような病気は、自分自身で決断していかなければならないことがたくさんあります。しかし病に臥せているときに、短期間で何から何まで理解し、決断をくだすことなどできません。

 

身近に心の支えを

 

普段から「ヘルス・リテラシー」のレベルを上げていくべきなのですが、自己啓発以外に日常生活の中で体系だてて学ぶ手段がありません。わたしどもは「ピアカウンセラー」を地域の中で育てていく事業も推進しています。患者さんやご家族と同じ目線に立って「自分もこうして乗り越えてきた」というような心の支えになる話は、突然病魔に襲われた方々を勇気づけてくれるに違いありません。

 

「お医者さんとこういうふうに話したほうがいい」とか「自分が望むような生き方はこういうふうに表現したほうがいい」。こうしたことが言えるカウンセラーを増やしていきたいですね。


中でも、保険金・給付金のお支払いを通じ、患者さんやご家族と対応してきた経験のある保険募集人は、ピアカウンセラーとして適任ではないかと思っています。


リアルなご家族やご本人の体験談を、ある程度の知識をもって整理していけば、給付金の請求があったとき適切なアドバイスができるのではないでしょうか。給付金は受け取ったが、何をどうすればいいのか、わからない、といった人に、いくつかの選択肢をご案内してあげるだけでも、お客さまは精神的に楽になるはずです。
なによりも、給付金などの経済的バックボーンがあるのですから選択肢も広くなります。

 

募集人だからできるサービス

 

頼ってもらって本望


よりよい治療環境を担保することから、生命保険とのつながりも重視しています。いま最先端のガン治療についてセミナーを展開しているアムテックスさんとも提携しています。


セミナーに参加した保険募集人のお客さまが、実際にガン患者と遭遇し、より深い情報を必要としているとき、医療者との橋渡し役として医療コーディネーターにつないでもらっています。 


例えば、自動車保険の加入者が事故を起こせばすぐに代理店やコールセンターに連絡をしますが、病気の場合、そうしたアクションを起す方は少ないのではないでしょうか。私の関わった事例では、日頃から加入している保険を整理し、何かのときは積極的に保険会社や募集人にコンタクトを取ろうなどと考えている方はいませんでした。


ガンに罹ったときも、保険に加入しているのですから、多少なりとも経済的には余裕があります。つまり最善の治療を選択できる環境にありながら、それを生かしきれていないのです。


通常、お客さまが保険会社に給付金などを請求するのは手術などが終わって一段落してからです。リビングニーズ特約もしかりです。保険金を請求しても、文字通り最期を迎えていたら使途が限られてしまいます。


ですから、最初に「お金のことは大切ですから、保険の証券などは確認しておいてください」と申し上げます。そうすれば、リビングニーズ特約の保険金を使って旅行に行ったり、治療法の選択肢も広げられます。


私の身近な例で、脳溢血で高度の後遺障害になった方が、一時金で2000万円の保険金を受け取りました。初期の段階で300万円ほどかけたリハビリが奏効し、いま現在、要介護状態ではあるものの車イスで生活できるまでに機能が回復しています。自宅にはエレベーターもつけることができました。


保険金のおかげで家族も楽になったわけです。もし保険に加入していることが分からなかったら、請求を放置していたかもしれません。初期の段階で治療に投資できたからこそ今日があります。


いま全社を挙げて推進している保全活動で「この1年(半年)ご家族はお変わりありませんでしたか」とお尋ねすることの意味は小さくありません。「何かの時にはお力になれるかもしれません。お電話ください」と言い続けてください。

 

認定ヘルスケアコーディネーター


さて、最後になりましたが、私どもの医療コーディネーター協会の会員は現在約120名しかいません。患者さんが願うような医療を実現するためにはもっと人数が必要ですが、養成には時間がかかります。


ただ、医療コーディネーターの需要は高まる一方で、資格取得を目的としなくても、たとえば保険の募集人の方が日常業務でお客さまにより適切な情報を提供したい、といったニーズにお応えするために「認定ヘルスケアコーディネーター講座」を開設しました。

 

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